#中東

幸せのアラビアを探して 終章

男は私をクリーク沿いの一件の家へ招待してくれた。そこは家と言うより集会所?民族衣装の地元の男達が集まっていた。そこで甘いものが大好きなアラブ人に嫌と言う程甘いアラブのお菓子を頂き、これまた砂糖のたっぷり入ったチャイを振る舞われ、終いには夕…

幸せのアラビアを探して14

イエメンから帰国の為、アラブ首長国連邦のドバイに降り立った。ドバイ、石油で潤った資金を元に、石油枯渇後の未来を見据え貿易と観光に惜しみ無く注ぎ、瞬く間に世界有数の近代都市へと変貌を遂げたシティリゾート。砂漠の中に忽然と現れた摩天楼。嘗て高…

幸せのアラビアを探して13

イエメンを去る朝も大音量のアッザーンにたたき起こされた。早起きは三文の得、空港までの送迎が迎えに来る迄もう一度サナアの街を歩くことにした。 昼は人でごった返す旧市街も朝は人影疎らである。狭い石畳の旧市街をイエメン門を目指し歩いていると何故だ…

幸せのアラビアを探して12

私が次に訪れた山岳部族の村はシバームとコーカバンと言う二つの兄弟の様な村だ。(世界遺産となっているシバームとは同名だけど別の村)コーカバンは高い崖の頂上に位置し、シバームは崖の麓に拡がっている。この二つの村はそれぞれの立地の特徴を生かす事…

幸せのアラビアを探して11

検問で郊外に出る申請を済ませ車は山道を登り始める。我々日本人には荒涼とした山岳に見えるイエメンの山道も、他のアラビアに比べれば随分と緑が多い。山に挟まれた平野には段々畑が連なっている。この緑多い山岳地帯は此処が幸せのアラビアと呼ばれる一つ…

幸せのアラビアを探して10

早朝、一番鶏が鳴く頃、夜明けのアッザーンが鳴り響く。イスラームの街に慣れてない人、いや、慣れてる人でさえサナアの朝は飛び起きてしまうに違いない。サナアは敬虔なイスラームの街、モスクの数が異常に多い。そのモスクが一斉にアッザーンを唱え、それ…

幸せのアラビアを探して9

イエメン建築は昔ながらの高層建築なので、どことなく歪だ。だがそんなところにも風情を感じる。内部は1階はどこも物置、2階は家畜などを飼うスペース。3階は女性4階に男性が暮らすスペースがある。そして最上階にはマフラージと呼ばれる応接間があり、…

幸せのアラビアを探して8

駄菓子屋の前に集まった学校帰りの小学生に捕まった私は出来心で折り鶴を折ってしまった。迂闊だった。あっと言う間に黒山の人だかりが出来てしまい私は一瞬の内に彼等に大道芸人に仕立てあげられてしまった。私の折った鶴を大事そうに持って家に帰る子供達…

幸せのアラビアを探して7

喧騒のスークを抜けそれを取り囲む様に拡がる静寂の住宅街に足を進める。サナアには○○博物館、○○城などガイドブックに名を連ねる様な見所は少ない。なので見所を順を追って 歩きたい様な旅人にはつまらないかもしれない。しかしサナアは街毎世界遺産。建て売…

幸せのアラビアを探して6

ごった返す人々に紛れてイエメン門を潜りスーク(商店街)に吸い込まれていく。狭い通りの両側には所狭しと小さな商店が連なっている。余りに間口が狭くて出入り出来ないから商店の店主はロープを使ってターザンの様に品物を飛び越えて出入りする。 アラブの…

幸せのアラビアを探して5

男は私に近寄り 「何浮かない顔してるんだ?相談に乗るよ!You are happy, so I am happy!」 と言った。彼を見て大概の事はすぐ解ったが、彼の人物が、そして話しっプリがとても面白かったので、私は彼に頼んでみる事にした。すると任せてくれ!とばかりに彼…

幸せのアラビアを探して4

迷宮を抜け漸くイエメン門に到着した。周りを見渡して目を丸くする。街並みもそうだが、そこを闊歩する人々!ダーバンを巻き、腰にジャンビーアと呼ばれる半月刀を指した男達、目を抜かして全身黒いベールで覆った女性達。これまで幾つもの歴史的街を歩いて…

幸せのアラビアを探して3

ホテルに着くと早速私は外に飛び出した。すると早速出迎え?がやって来る。子供達だ。一斉に 「ソラ!ソラ!」 と捲し立てる。私は「空」と勘違いして空を見上げる。子供達はからかわれたのだと思ったのか更に 「ソラ!ソラ!」 と騒ぎ出す。 「そうだよな・…

幸せのアラビアを探して2

きらびやかなドバイ空港を後にして、数世代歴史を遡ってしまったかの様なサナアの空港に到着した。砂埃が混じるからだろうが写る世界が何処か・セピアでまるで古い映画の中に紛れ込んでしまったかの様だ。いやそれは景色だけから来るものではあるまい。辺り…

幸せのアラビアを探して1

イエメン、旅や歴史に興味が無く、報道だけから情報を得ている人々にとってそこは危ない国としか写らない国だろう。事実情勢は常に危うい国ではある。第二次大戦後は資本主義と共産主義の鍔迫り合いに巻き込まれ南北二つにイエメンは分離した。統合後も国力…

アンマン4

ローマ劇場のある丘を登ってアブー・ダルウイッシュ・モスクを目指した。今までで一番急な坂、というか階段。高いところからの展望が好きなので自然私の旅に登り坂はセットの様なものだが、今回は特に坂が多い旅だった。それだけ展望を楽しんだとも言える。 …

アンマン3

アンマンのダウンタウンのもう一つの魅力は、街の歴史あるものが残されている事だ。この街の歴史は古いから此処には飛びきり古い遺跡が残されている。ダウンタウンを見下ろせるアルカラの丘の頂上にはヘラクレス神殿の跡だと言われる柱が残っている。ウマイ…

アンマン2

現在のアンマンは数多い丘が連なる大地に何処までも街が拡がる巨大な都市だ。そして各丘にはそれぞれ特色のある地域が拡がっている。だからポイントを押さえなければとホテルの美人のお姉さんにアドバイスを伺った。 「そうねぇショッピングならこっち、食事…

アンマン1

さて今回の旅も遂に最終目的地アンマンに到着となった。悔いの無い様に一日を過ごそう。此処アンマンもシリアのダマスカスと肩を並べる程歴史がある街だ。なんと9千年前からの記録が残る。そして此処もダマスカス同様様々な勢力がこの街を支配した。 紀元前…

死海

翌朝起きれば年甲斐も無くはしゃぎ過ぎたのか体の節々が痛む。ロボットの様な動きで車に乗り込んだ。車窓からは月面の様な地形が続く。車はどんどん高度を下げていく。やがて深く沈んだ青色の湖が見えてくる。海抜マイナス418メートル。地上で最も低い場…

ペトラ バイ ナイト

一旦ワディムーサの街で夕食を摂り8時半に再び遺跡のゲートに戻った。今宵は週三回開催されるペトラ・バイ・ナイトの開催日。続々とショーに参加するメンバーが集まった。簡単な説明の後、一団は再びエルハズネを目指す。漆黒の闇の中、一団は道の両側に添…

ペトラ遺跡エドディル神殿

九十九折りの坂道を息を切らせつつ登っていく。振り返ればペトラの大地が小さく見える。道端には何軒もベドウィンの女性が土産物のテーブルを並べている。彼女達は元々この地で暮らしていた人々で遺跡保護の為引越を余儀なくされた代わりに此処での営業権を…

ペトラ遺跡シク岩壁左岸

このガキンチョ君は厄介者だった。何せ土地を知り尽くしている。そして若い。まるで道無き道をどんどん進み猿の様に岩から岩へと飛び移る。傍らは100メートルの断崖絶壁である。私は尻込みの連続。それをからかい半分に彼はプロフェッサー!と私を呼び立…

ペトラ遺跡シク岩壁右岸

恐る恐る覗きこみ、私は二つの意味で大きく息を飲み込んだ。一つは100メートルの切り立った断崖絶壁を覗きこんだ恐怖だ。そしてもう一つは私の勘がビンゴであり、期待していたエルハズネ神殿がそこにあった感動だ。心臓が脈打っている音が聞こえる。心を…

ペトラ遺跡王家の墓

平原部のローマ遺跡を見終えた後、周囲を取り囲む岩壁に掘られたナバテア人の墓を訪ねた。こちらが本来のペトラ遺跡と言えよう。だがとても全部を見る事は出来ない。余りに広過ぎるからだ。だが見所は集中している。それは高貴な人々が眠る場所で通称王家の…

ペトラ遺跡ファザード通り

エルハズネ神殿を右に峡谷を進んでいくと、ちょっとした登れそうな箇所があった。ご丁寧に「登ってはいけません」と看板が立っている。と言う事は何かある。そして多くの人が登ったと言う事。勿論危険だからと言う場合もある。そして遺跡保護の場合もあるの…

ペトラ遺跡エルハズネ神殿

此方を聞いて気分を盛り上げお読みください(笑) 何故ペトラは交易で栄えた街なのにこの様な秘密基地の様な立地に築かれたか?それはこの都市を築いたナバテア人のルーツに秘密がある。ナバテア人はアラブ系の遊牧民族が起源だが、彼等はこの地に移り住んで以…

ペトラ遺跡シクを抜けて

此方を聞いて気分を盛り上げお読みください(笑) ペトラ遺跡は強靭な体力を必要とする。ゲートからシクと呼ばれる峡谷まで徒歩約30分、そこからシクが1・5キロ。その峡谷を抜けてやっと本格的な遺跡が始まる。四方を岩山に囲まれた広大な内部の平原を抜け…

ペトラ遺跡プロローグ

此方を聞いて気分を盛り上げお読みください(笑) アンマンに一泊し待ちに待ったペトラ遺跡に向かう。アンマンを過ぎると車窓からは緑が徐々に消えていき、やがて月面の様な景色となる。途中ドライバーの好意でショーバックと呼ばれる遺跡に立ち寄った。砂山の…

ジェラシュ2

劇場から遺跡を眺めて印象に残るのは卵形に配された列柱だろう。これはフォーラムと呼ばれる広場だが何処かで見た事がある様式だ。思い出してみるとそれはヴァチカンのサンピエトロ広場だ。この様式は古くはこの時代にもう生まれていたのかもしれない。 劇場…