幸せのアラビアを探して12

 私が次に訪れた山岳部族の村はシバームとコーカバンと言う二つの兄弟の様な村だ。(世界遺産となっているシバームとは同名だけど別の村)コーカバンは高い崖の頂上に位置し、シバームは崖の麓に拡がっている。この二つの村はそれぞれの立地の特徴を生かす事によって村の防御に役立てて暮らしている。

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 平野部では農作物を育てる事や交易には便利だが、防御と言う点では無防備に近い。一方崖の上では農業や交通には不便なものの、その立地は天然の要塞と言える。二つの村に別れて住む事により。崖の上のコーカバンは平時では敵の来襲の見張り役を務め、敵来襲時にはシバームの人を匿うシェルターの役割を務める。一方シバームの民は平時では作物の不足しがちなコーカバンに食料を調達するのが役目だ。

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 現在では立派な車道が完成し急峻な山道を通る事は少なくなったが、現在でも二つの村は共同で催事を催したりしながら協力しあって暮らしている。

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 私が最後に訪れた山岳部族の村はハッジャーラと呼ばれる村だ。グランドキャニオンを彷彿とさせる風景の中、大地に突き出した岩山の上にイエメン建築がビッシリと乗っかっている不思議な光景を目にする。先日紹介したロックパレスは岩の上に建てられた不思議建築だったが、ハッジャーラは岩の上に建てられた不思議村とでも言うべきであろうか?

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 勿論これも防御の為こうした立地に建てられたのは言うまでもない。崖は途中で抉れ山羊でさえ登る事は不可能。またこの地方は午後になると霧が多く発生し村全体を覆ってしまう。正に難攻不落な村なのである。唯一村に通ずる山道を登っていけば、村の門にはライフルを構えた門番が立ちチョッピリピリッとした雰囲気が漂うがそれも最初の内、来訪者が旅人と解ると、それまで静まり返っていた村内が賑やかになり始める。家の前に急遽品物を並べ始めにわか作りの土産屋が並び始めた。

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 ドライバーの豪快な運転に肝を冷やしながら再びサナアの街に戻った。サナアの一番素敵な時間、夕暮れを再び楽しみながら残す時間を精一杯楽しんだ。アッサローム・アレイコムと人々と挨拶を交わし、子供とじゃれ合い、カートの葉を噛み上機嫌で宿に戻り気さくな従業員と会話を弾ませる。和やかにサナア最後の夜は更けていった。