幸せのアラビアを探して5

男は私に近寄り

「何浮かない顔してるんだ?相談に乗るよ!You are happy, so I am happy!」

 と言った。彼を見て大概の事はすぐ解ったが、彼の人物が、そして話しっプリがとても面白かったので、私は彼に頼んでみる事にした。すると任せてくれ!とばかりに彼はビルのオーナーに交渉し始める。勿論返事はOK!彼はオーナーから鍵がジャラジャラついた輪を自慢げに降りながら階段を駆け登る。私もそれに続いた。

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 金属製の扉を開けるとそこには私が思い描いていた風景が広がっていた。これを見たくてわざわざ此処へやって来たのだ。私は暫し時を忘れて目の前の風景に没頭した。どれくらい経ったか私が振り返ると彼が

「You are happy,so I am happy!」

と彼は決め台詞を繰り返す。その後の言葉も容易に察する事が出来るが、彼が欲しがったのはなんと食べ物だった。彼は一文無しだったのだ。私の願いを叶えてくれたのだから、それくらいは容易い御用だ。しかもイエメンは物価も安い。私は彼に導かれるまま現地の食堂へ入った。

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 二人でサルタと呼ばれる現地の石鍋料理に舌づつみを打った。香辛料がたっぷり入ったシチューの様な食べ物にナンをつけて食べる。二人してひとつの鍋を突っつきあった。その後二人して店にかけられた手拭いで手を吹き店を出ると彼はカートも買って欲しいと言う。カートとはイエメン独特の風習で、覚醒作用のある葉っぱを噛む。他の国だと薬物指定になる可能性もあるが、イエメンでは男は午後になるとカートの葉っぱを噛みながらノホホンとする習慣がある。街で午後に男を見れば、瘤とりじいさんみたいに頬を膨らませてる男を良く見るが、それは頬にカートの葉っぱを溜めて噛み噛みしてるからなのである。

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(写真右から二人目の男性の頬に注目!彼は頬にカートの葉っぱを溜めてk。瘤取りじいさん風になっている。)
 満腹になりはじめてのカートにほろ酔いになる私に彼は決め台詞を残し雑踏へ消えた。

「You are happy, so I am happy 」

 私にとっては地元の食堂も、カートもイエメンに行ったら是非試してみたい事だったので、彼は無意識のうちに三つも私の願望を叶えてくれた事になる。さて、酔いの勢いのままサナアの街を堪能しよう!私は颯爽とイエメン門を潜りそこから始まるイエメンのスーク(商店街)へと突入した。