ペトラ遺跡シク岩壁左岸

 このガキンチョ君は厄介者だった。何せ土地を知り尽くしている。そして若い。まるで道無き道をどんどん進み猿の様に岩から岩へと飛び移る。傍らは100メートルの断崖絶壁である。私は尻込みの連続。それをからかい半分に彼はプロフェッサー!と私を呼び立てる。しかし彼も坪は心得ている。私が立ち往生しているとさりげなく近寄って来て手を貸してくれる。心憎い少年なのだ。

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 こうしてこまっしゃくれた少年に導かれてへっぴり腰の格好悪いインディ・ジョーンズは岩場を伝いながら先へと進んだ。どれくらい歩いただろう?少年がプロフェッサー!と自慢げに下方を指差している。帽子が風に飛ばされない様に押さえつつ私もへっぴり腰に下方を眺める。そして「グッジョブ!」とお互いハイタッチ!遥か下方では蟻ん子の様な観光客が動き回っている。右側の断崖には先程私がいた場所に別の白人達が驚いた表情で此方を見ている。二人で思いっきり口笛を吹いた。此にてミッションコンプリート!最高の気分だった。

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 帰り道は私も少し慣れてきたので馬鹿話で盛り上がった。この年頃の少年との馬鹿話はつまり猥談だ。イスラームは宗教的制約が厳しいので、制約の無い観光客は格好の猥談の相手なのだろう。勿論私も望むところだ。帰り道、私はインディでは無くただのエロ教授に成り下がってしまっていた。

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 犠牲祭壇でエロガキ君と別れ、幾つかの見所を押さえながらローマ遺跡まで私は戻った。

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 そこから先、エルハズネと双璧を為す見所エドディル神殿を目指す。しかし此処もまた今まで同様登り坂が続いている。少年のペースで道無き道を進んだ今の私にとってとどめの様な登り坂だ。

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 しかし此方は多くの観光客が通る道なので整備もされている。トボトボと登っていく私をロバのタクシーに乗った白人のオバサンが抜かしていく。太ったオバサンを乗せて坂を登るロバに思わず同情してしまう。