幸せのアラビアを探して9

 イエメン建築は昔ながらの高層建築なので、どことなく歪だ。だがそんなところにも風情を感じる。内部は1階はどこも物置、2階は家畜などを飼うスペース。3階は女性4階に男性が暮らすスペースがある。そして最上階にはマフラージと呼ばれる応接間があり、寛ぎのスペースになっている。アラブは日本と同じ様に屋内では靴を脱いで過ごす。ホテルでもマフラージは旅人の団欒スペースとして解放されていて、此処で各国から訪れた旅人と旅談義に花を咲かせた。

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 夕暮れも迫りマフラージから屋上に出て、更に給水塔のある天辺によじ登るとなんと先客がいた。ベールを被っているから解らなかったがロシアから訪れた女性観光客だった。(イエメンでは旅人も女性なら髪を覆わなくてはいけないから)

 サナアが一番美しく映える時間、それは夕暮れだ。イエメン建築の日干し煉瓦の橙色が夕焼けに照らされて燃えた様に浮かび上がる。折角ロシアから来た美人が隣にいるって言うのに二人の口からは
アメイジング!」
と言う言葉しか出てこない。その時間違いなく我々は魔法の絨毯に乗ってサナアの街を飛んでいた。そう思わせるサナアの夕暮れだった。

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 街に降りる頃サナアの陽が暮れた。街に一斉にアッザーン(礼拝の呼び掛け)が鳴り響く。大人達は世話しなくモスクへ向かい、子供達は遊び続ける。旅人はそろそろ宿に戻る時間だ。街に点る水銀灯がノスタルジーを煽る。それに拍車をかけるのがカメリア窓と呼ばれるイエメン建築独特の採光窓だ。

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 イエメン建築は日干し煉瓦を使用し高層ビルを建てるので、特に低層部は強度の関係から大きな窓を作れない。なので採光の為の小窓が作られるのだが、これにステンドグラスが多用される。なので陽が落ちるとイエメン建築のカメリア窓から漏れる光がステンドグラスを通して独特の明かりとなってサナアの夜の風景を彩っている。

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 ホテルに戻り夕食を食べる。サーブするウエイターは挨拶程度なら何十か国語をこなす。テーブル毎に違う国籍の観光客に気軽に声をかけ話を盛り上げる気さくなウェイターさん。部屋に戻る、私の部屋のカメリア窓にも灯が点る。さてそろそろ寝ようとするか、でも明日の目覚ましは必要ない。何故ならアッザーンが起こしてくれるから。