幸せのアラビアを探して2

 きらびやかなドバイ空港を後にして、数世代歴史を遡ってしまったかの様なサナアの空港に到着した。砂埃が混じるからだろうが写る世界が何処か・セピアでまるで古い映画の中に紛れ込んでしまったかの様だ。いやそれは景色だけから来るものではあるまい。辺りに蠢く人々皆ダーバンを巻き、白いワンピースの様な民族衣装にヨレヨレのジャケットを羽織っている。まるで背景も登場人物も映画の中の様だった。そんな雰囲気にワクワクしながら辺りを見回したが一向に迎えの人物が見当たらない。

 私が訪れる数ヵ月前、外国人旅行者が部族間抗争の人質として誘拐される事件が起きた為、私は予め移動のみは前もってドライバーガイドを頼んでいた。イエメンでは誘拐事件が頻発している為、旅人はサナアから地方に出る時、登山許可証的な発想で許可証の発行を受けねばならない事になっている。その手続きは短い旅では時間の無駄だったので、それを含めて予め頼んでおいたのだが待てど暮らせど待ち人は来ず、遂に到着ロビーには私一人になってしまった。

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 そんな私をタクシーの運転手が見逃す筈も無く、私は運転手に取り囲まれてしまった。ずっと断り続ける私にお節介な程旅人に優しいアラブ人の魂が揺さぶられるのだろう。

「ではおまえはいったいどうしたのだ?私は何が出来る?」

 余り彼等を心配させる訳にもいかず彼等から公衆電話の場所を教えて貰う。交換手が間を挟む、日本なら前時代式の公衆電話に戸惑いながら慣れぬ英語で現地の代理店に連絡を取れば、相手は非常に慌てている様子。すぐ行くから待っててくれ!

 ひとまずロビーに戻り、運転手達にすぐ来るらしいから安心してくれ!と告げて待っていると一人の男が走りながらやって来た。

「ごめん!ごめん!あ!いや私はドライバーでは無くてボスなんだよ。実は・・・貴方のドライバーを予定した奴が今朝逮捕されちゃって(笑)やっと別の人物を手配できたから紹介しよう!」

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(アラビアンフェリックスホテル)
 なんて事だ(笑)何があったかは知らないが、なんか面白そうな旅になりそうだ。代わりの運転手も愛想の良いオジサンだ。彼の運転と会話に花を咲かせながら車窓から見えるサナアの風景に胸を踊らせながら、車は今回の宿アラビアン・フェリックス・ホテルに到着した。

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(私の部屋)
 今回の私の旅のテーマ「幸せのアラビアを探して」その題名と全く同じ題名のホテルだ。このホテルは古くからあるイエメン建築をそのまま利用して建てられている。サナアは街毎世界遺産に指定されているから、世界遺産に泊まる事になる。