幸せのアラビアを探して4

 迷宮を抜け漸くイエメン門に到着した。周りを見渡して目を丸くする。街並みもそうだが、そこを闊歩する人々!ダーバンを巻き、腰にジャンビーアと呼ばれる半月刀を指した男達、目を抜かして全身黒いベールで覆った女性達。これまで幾つもの歴史的街を歩いてきた。ヨーロッパは歴史ある街は多いけれど、人々は現代のモードを纏っている。アラブの街にしたって民族衣装は多かれこれ程までの姿の人は少ない。サナアは街も、そこを往く人々も、まるで歴史を巻き戻してしまったかの様な世界観に住んでいる。

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 イエメン門に登りそこからサナアの街を眺めた。イエメン建築は独特だ。歴史的に古い建物なので勿論鉄筋コンクリートなんて使用していない高層建築だ。何故古くから高層建築が発達したか?それは古くから続く部族間抗争に由来する。更にイスラームは交易で生計を立ててきた。交易で品物や金品が集まれば襲撃される恐れも大きくなる。だから城壁で街を囲み、その中に多くの人々が居住する為、高層建築が必要だったのだ。日干し煉瓦を積み重ね、雨を防ぐ為漆喰で補強する。すると日干し煉瓦の橙色と漆喰の白がアクセントとなってまるでお菓子の家が出来上がる。勿論この芸術的センスは此処に住んできたイエメンの人々にも重要な事で、各々の建築がそのお洒落さを競っている。

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 以前は潤ったイエメンだったが、現在はアラビアにありながら石油が算出出来ない事、先に述べた様に政情が安定せず国力が乏しい事から、アラブの最貧国となってしまった。しかし皮肉な事に近代化が遅れに遅れた事が、この世界遺産を近代化と言う破壊から救ってくれたとも言える。石油マネーで次から次へと世界の何処にでもある高層ビルが建ち並ぶアラブへと変わりつつある昨今、イエメンでは歴史的な高層建築が今でも現役で残っている。しかし今起きている紛争が、その世界遺産をも脅かしている。

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 さてイエメン門に登り景色を満喫した私だったが、本当に眺めたいのはこの構図では無い。イエメン門を含めたサナアの街の写真に惹かれたのだから。一旦門を降り。門の向こうに登れるビルは無いか私は探した。しかしそれに該当するビルは観光的物件では無く地元の建物で、交渉するのに厄介そうで躊躇していた。

 すると躊躇する私に気づいたか?一人の男が忍び寄ってきた。