幸せのアラビアを探して11

 検問で郊外に出る申請を済ませ車は山道を登り始める。我々日本人には荒涼とした山岳に見えるイエメンの山道も、他のアラビアに比べれば随分と緑が多い。山に挟まれた平野には段々畑が連なっている。この緑多い山岳地帯は此処が幸せのアラビアと呼ばれる一つの要因ともなった。

イメージ 1


 車は急峻な峠道に差し掛かる。昔は此処周辺の名産の乳香を駱駝が列を成して旅していただろう山道を、今はコンボイが連なって走っていく。イエメン人の車の運転は先述の通り荒っぽいが、ドライバーガイドは豪快な性格なのでそれに輪をかけている。大型コンボイが向かってきていると言うのに平気で追い抜きをかけるし、時にタイミングが微妙になって路肩から外れて運転するし、何度峠から真っ逆さまになるだろうと冷や汗をかきながら、峠から拡がる絶景を楽しみながら、我々は最初の村スーラに到着した。

イメージ 2


 イエメンの山岳部族は未だに頻発する部族間抗争から身を守る為、どの村も防衛策を講じながら暮らしている。スーラは急峻な岩山の懐に残る三方を鉄壁の城壁で囲んだ中に村がある。イエメン建築には地方毎に特色がある。防水と装飾の為に使用される漆喰、そのデザインが地方毎に微妙に変わるが、降水量の極端に少ない砂漠の地方では、防水の必要性が無い為漆喰を全く使用しない村もある。

イメージ 3


 村に旅人が訪れたと知ると、子供達が一斉に集まってくる。サナアでは子供達が集まってくるのは純粋な彼等の興味心だが、村では子供も立派な稼ぎ頭、皆両手にお土産を抱えて自分の店へ勧誘に必死だ。健気だが逞しいものだ。

イメージ 4


 この村の茶屋で一服した。頂くのは勿論チャイ。紅茶にこれでもか!と砂糖を入れて甘くして飲むのがアラブ風。実はイエメンはコーヒーのモカでも有名な場所だが、一般には余りコーヒーは飲まない。その昔コーヒーはアラブでは薬として重用され身分が高い人か交易品として扱われ、庶民の口には入らなかったそうだ。今でもアラブのコーヒーは香辛料が加わり、我々の飲むコーヒーとはかなり印象が違う。