ペトラ遺跡シク岩壁右岸

 恐る恐る覗きこみ、私は二つの意味で大きく息を飲み込んだ。一つは100メートルの切り立った断崖絶壁を覗きこんだ恐怖だ。そしてもう一つは私の勘がビンゴであり、期待していたエルハズネ神殿がそこにあった感動だ。心臓が脈打っている音が聞こえる。心を落ち着かせ神殿を眺めた。遥か下方には豆粒の様な観光客の姿。ずっと見下ろしていると自分が神になった様な気分になる。でも以前私はへっぴり腰、隣に岩壁に座っている白人の女の子に恐くは無いのか?と尋ねると全然と涼しい顔。

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 いつも不思議に感じるが、日本の場合、こうしたカップルだらけの場所に来ると独り者は気が引けて居心地が悪いものである。しかし白人達は実にフランクで打ち解けやすい。これはどうしたものなのか?彼等に聞けば此処までの道程は彼等のガイドブックには明記されているそうである。(多分ロンリープラネット)しかし私が持つ地球の歩き方には載っていなかった。彼等にそれを伝えると、彼等はビックサプライズ!と口を揃えた。真に彼等の言う通り!見下ろせる場所があるとは知っていたがその道程を知らずに現地に赴いた私はまるで導かれる様に此処へ辿り着けたのだから!

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 喜びながら景色を楽しんでいると、シクを挟んで左側の岩壁にも人が佇んでいた。私はそっちからも眺めたくなったが、当然シクを隔てているのでそちら側の岩壁には渡れない。どうやらその道程は彼等のガイドブックにも記載されていない様だ。しかし彼等の中に一人手がかりになりそうな情報を持つ者がいた。こうして私の次なる目標が決まった。

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 上の写真は神殿の真向かいのシクの出口の写真、まず私は写真で見るとシクの左上の天辺から神殿を眺めていたが、今度は右側天辺から神殿を眺めようと言う魂胆だ。

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 私は往き来た道を引き返すとファザード通りに戻り、彼に教わったローマ劇場脇の階段をひたすら登った。そこには犠牲祭壇と呼ばれるおぞましい名前のスポットがありそれに因んだ遺構が残されている。

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 そこからの眺めもまた最高なのだが、私は早速周囲で目指す場所の聞き込みを開始した。しかし返ってくる返事は何れも「ガイド無しでは到底無理だ!」との一点張りだった。此処まで来て諦めるのも癪に障るので私は一人ガイドを雇う事にした。雇ったのはそこら辺にある土産屋のガキンチョである。このガキンチョがこまっしゃくれたガキンチョなのだが、私はそれがとても気に入ってしまった。何故ならそのシチュエーションはまるでインディ・ジョーンズの2作目魔宮の伝説そっくりじゃないか!私はガキンチョに私をプロフェッサーと呼ぶように指示した。

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(映画より)
行きまっせ!プロフェッサー!

こうして私達の探検は始まった。