幸せのアラビアを探して7

 喧騒のスークを抜けそれを取り囲む様に拡がる静寂の住宅街に足を進める。サナアには○○博物館、○○城などガイドブックに名を連ねる様な見所は少ない。なので見所を順を追って 歩きたい様な旅人にはつまらないかもしれない。しかしサナアは街毎世界遺産。建て売りなんて存在しない。一件一件漆喰で美しさを競い合ったオリジナル建築。そんな街並みが続く迷宮を歩く事自体が最高級の街歩きを約束してくれる。

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 そしてサナアの男達は非常に人懐っこい。キョロキョロしていれば道案内を名乗り出るし、そうでなくとも「アッサローム、アレイコム」と声をかけてくる。日本語で「こんにちは」を意味する言葉だが「貴方が平和であります様に」と言う意味を含む。アラビア語イスラーム圏全土で理解されているから世界で一番多くの人に愛されている挨拶の言葉でもある。

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 更に感心してしまったのは「何処から来たのか?」と尋ねられ「日本」と応えると例外無く「ウエルカム!」と言う返事が返ってくる事だ。旅人としてこれ程嬉しい言葉は無い。恥ずかしい事だが、旅前に誘拐事件もあった事から最初は緊張も少なからずあった。そんな緊張を一気に解き崩してくれたイエメンの男達。「おもてなし」と大言壮語してる我が国の人々はそれが出来ているのだろうか?

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 そんな静寂で和やかな旧市街の住宅街。スークを賑わせているのが大人達なら住宅街を賑わすのは子供達だ。サナアの子供達は親に似てかとびきり人懐っこい。彼等にとって旅人は、学校で習った英語の実力を試す格好の遊び相手でもあるのだ。あちらこちらで彼等と戯れたが、そんな中でガキ大将風の子供に

「ファックユー!」

って言われた。勿論時に旅人を良く思わない人々もいる。だけど彼にはそんな風潮は見受けられなかった。少年を取っ捕まえて言った。

「それは言っちゃいけない言葉だよ!」

 彼は明らかに動揺している。そして

「ファックユーってどう言う意味なの?」

 多分近所の悪い大人か駄目な観光客が彼にインチキを教えたのだろう。私はアラビア語でそんな悪い意味の言葉を知らないが、それは酷い言葉だからもう観光客にそんな言葉を言ってはいけないよ!と彼に諭した。彼は神妙な面持ちだったが、私が怒ってない事に安心し、笑顔を残して去っていった。

 アラブの旧市街には道が重なった場所に小さなキオスクがあり、それが子供達の格好の溜まり場になっている。日本で言う駄菓子屋の役目を果たしている。そこで私は余計な事したばっかりに・・・