インド旅行記

インド旅行記後編最終回

インドに於けるイスラームとヒンズーの確執は大きく二つの要素がある。先ずはインド、パキスタンと二つの国に別れてしまった経緯だ。 6代目アウラングゼーブの失策以降、ムガル帝国は縮小を重ね、遂には首都デリーしか実効支配出来ない状態に陥っていた。ヒ…

インド旅行記後編10

アウランガーバードから、十年前を考えたら、これはインドとは思えない様な心地よい小綺麗な列車に揺られムンバイに到着した。今ではインドで最大の都市となった貿易の街ムンバイ(旧名ボンベイ)そこは旧宗主国イギリスの影響を色濃く残した最もインドらしく…

インド旅行記後編9

私がエローラ、アジャンター遺跡を巡るに当たって基点とした街。それは大抵ツアーであり個人旅行であり変わらない事だと思う。そして大抵の旅人は二つの遺跡を見学すると街を素通りしてしまう。しかし私は寧ろこの街に興味を抱いていた。その街の名はアウラ…

インド旅行記後編8

カジュラホー村を後にして私は車をチャーターして南西を目指した。途中名も知れぬ峠の茶屋で一服を入れた。私が茶屋に入るとインド人に囲まれた。観光地ならいざ知らず、此処はド田舎、突然現れた外国人が物珍しいのだろう。いや、もしかすると彼等にとって…

インド旅行記後編7

十年振りにカジュラホー村を訪れた。いつだって未だ見ぬ国を目指す私が、トランジット以外で再訪出来る機会を持てる事は珍しい。だからこその期待感もあった。 ホテルを出れば以前と変わらぬ長閑な風景が私を楽しませてくれた。少し歩けばインド人が話しかけ…

インド旅行記後編6

タージ・マハルとアグラー城の見学を終え、更にアグラーのジャマー・マスジッド(金曜モスクと訳し、金曜はイスラームにとって、聖なる日である事から街の中核となるモスクをそう名付ける事が多い。)を参拝した後、私は郊外の見所へと足を向けた。 其処までは…

インド旅行記後編5

名君3代目アクバルによって築かれたムガル帝国の最盛期。王朝に安定が訪れると文化が花開くものだが、4代目ジャハーン・ギールは政治、軍事には大きな仕事を残さなかったものの、詩や絵画の部分で活躍を残した。続く5代目シャー・ジャハーンはムガル帝国…

インド旅行記後編4

デリー郊外に残るムガル帝国以前のイスラーム王朝が建造したミナレット、クトゥブ・ミナールを見学後、私は次の目的地ジャイプールを目指した。インドの首都デリーとタージ・マハールのあるアグラー、そしてジャイプールを線で結ぶと綺麗な三角形になり、日…

インド旅行記後編3

プラーナ・キラーとフマユーン廟。それらを抜かせばニューデリーにはそれほど目を奪われるものは無い。第一次世界大戦の犠牲者を弔ったインド門も、デザインはまんまパリの凱旋門。秩序だった街路はインドらしさに欠ける。私は足早にオールド・デリーを目指…

インド旅行記後編2

二度目のインドはしっかりと自分のテーマに沿ったものを限られた日程の中で確実に見ておきたかった娘ともあり、移動は前もって予約を住ませ、一部は車をチャーターして臨む事となった。 (デリーのヒンズー寺院ラクシュミーナーラー寺院) デリーは前回殆ど観…

インド旅行記後編その1

初めてインドを訪れてから十年以上の月日が流れた。十年経てば自分も変われば旅も変わる。バックパックを背負うスタイルこそ変わらないが、向こう見ずな体験ありきの過去の旅に比べ、テーマを絞り歴史を追う旅を目指す様になった。これまでは眺めた風景は心…

インド旅行記前編最終回

遂にインドを出発する朝となった。朝食を食べに宿を出た。丁度辻に出た瞬間だった。私の右頬に強烈な痛みが走った。何かが当たったのだ。右頬から伝わる液体の感触…私も遂に撃たれたか?でもそれなら今生きてはいまい。恐る恐る右頬に手をあてる。手にはビ…

インド旅行記前編10

私を乗せたプロペラ機は後ろ髪を引くかの様にカトマンズ盆地を旋回しながら上昇し、この旅の最終目的地コルカタへと向けて飛び立った。 人、人、人、行き倒れ、行き倒れ、行き倒れ…。コルカタの安宿街サダル・ストリート界隈は酷い有り様で、インドに舞い戻…

インド旅行記前編9

私の体調が回復したのはジェネラル・ホスピタルの名医によるものである事は揺らぎ無い。しかしそれをサポートしてくれたのはカトマンズの環境も大きく影響したと私は感じている。 カトマンズはバックパッカーにとって沈没の街として有名な街だ。バックパッカ…

インド旅行記前編8

その後も私の体調は思わしくなかった。いや、徐々に悪化していった。やっとの事で辿り着いたインドとネパールの国境。国境を超えるとガラリと変わった事がある。今は解らないが、当時のネパールはインドに比べ圧倒的に西洋文化が流入していた。土産物屋に並…

インド旅行記前編7

そんなこんなで私が訪れたのはカジュラホー村。男女が交合するエロティックなレリーフが刻まれた寺院が点在する事で有名な村だ。此処も二度目のインドの旅と被るから詳細はそちらに譲る。但し此処は一度目と二度目では大きく環境が変わった。二度目は世界遺…

インド旅行記前編6

アグラーとタージ・マハールについては二度目のインドの旅で詳しく書こうと思うから、此処では簡単に済ませようと思うが、此処で出逢ったイスラーム王朝の王妃の墓標タージ・マハールの世界観は、ヒンズー教の聖地ヴァラナシのカオスに満ちた混沌の世界とは…

インド旅行記前編5

行き過ごしてしまったとは言え、インド屈指の見所であろうタージ・マハールを見ずにインドを去るのは余りにも惜しい。タージ・マハールを見るべく行き来た道を後戻りして私はアグラーへと引き返す事にした。往きは適当に列車に乗り込み大変な思いをした。だ…

インド旅行記前編4

翌朝私はバラナシの街の散策を始めた。人、人、人、牛、牛、牛、行き倒れ、行き倒れ、行き倒れ。強烈な動物臭、それを打ち消すべく人々の強烈な香水の香り、原色のサリー。旅人を見つけるや否や「バクシーシ!」と行き倒れの腕が足首を掴まんがばかりに伸び…

インド旅行記前編3

さて長いこと中断していた初めてのインドへの旅を再開しよう。私はインドに到着するなり、インドの洗礼とも言えるインチキタクシー、ボッタクリ宿、そしてインチキツーリストの三つ巴の攻撃を受け、それらをベロンベロンに酔っぱらう事で振りきった。公園で…

インド旅行記前編2

当時の難解なインドの鉄道チケットをどうやって私が入手したか今となっては解らない。しかしそれ以上にヒンズー語表記しか無いプラットホームで、私はどの列車に乗ったら良いのか途方に暮れていた。 私はこの旅行でデリーを経ったら、アグラーでタージ・マ…

インド旅行記前編1

08年にイスラームをテーマとした旅の一貫で訪れたインドを紹介したいと思った。が、その前にそれより十数年前に訪れた初めてのインドの旅を先に紹介したいと思う。 それまでカナダ、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパと先進国の御綺麗な国しか巡ってな…