インド旅行記後編4

 デリー郊外に残るムガル帝国以前のイスラーム王朝が建造したミナレットクトゥブ・ミナールを見学後、私は次の目的地ジャイプールを目指した。インドの首都デリーとタージ・マハールのあるアグラー、そしてジャイプールを線で結ぶと綺麗な三角形になり、日本から短期間でインドを訪れるツアーは大抵この三都市を巡るものなので、旅行業界ではこれをインド・ゴールデントライアングル等と呼ぶ。今回の私の旅もこのコースを辿ってから別ルートを付け加える形である。

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(クトゥブ・ミナール)
 ジャイプールはムガル帝国では無くインド土着の王、マハラジャが統治した街だ。ではイスラーム王朝の統治下であった筈の北インドマハラジャの統治する街があったのか?その答はムガル帝国は全てを直轄統治するのではなく、現在の連邦国家の様に多くの土地に土着のマハラジャを認可し、彼等にその土地を統治させ、それを纏めあげると言う方法でインドを統治していたのである。

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(アンベール城)
 先にも述べた様にムガル帝国とは外来の宗教を持つ外来の人種によって成立した王朝。彼等が大多数の土着の民族の上に立つと言う事は、こうした方法でしか、ある意味成り立たなかったと言える。そしてこうした手法を取った事でムガル帝国の磐石の体制を整えたのが三代目の名君アクバルだった。彼は積極的にイスラームとヒンズーの融和路線を敷き、此処ジャイプールのマハラジャの娘と結婚し、文化、建築等様々な分野で両文化の融合を勤めた。

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(アンベール城)
 しかし二代目フマユーンが病没し、アクバルが後を継いだのは彼が若干13歳の時、幾らなんでもそんな若輩で王朝を纏めあげ、更には名君と呼ばれる様に成長するなんて、少し盛り過ぎているのでは?と私は疑問に感じていた。しかしその答は後に旅したパキスタンの旅で解明される事となる。

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(アンベール城内部)
 ムガル王朝は二代目フマユーンの時代に一度滅びた事は前回話した。その際フマユーンの息子アクバルは攻め込んできた敵将シェール・シャーにより人質とされてしまう。しかしこのシェール・シャーは並々ならぬ武将であった。この土地の特性を良く把握しており、短期的に次々と有効な政治を行って新しく支配した土地を纏めあげてしまった。その中でも異宗教である民族を上から押さえつけようとせず、融和路線を取った手段は巧妙であった。アクバルは辛い人質時代ではあったが、自分が返り咲く日々を夢見つつ、このシェール・シャーが行った華々しい効果ある政治をじっくりと学んでいたに違いない。

詳しくは
パキスタン旅行記ロータス・フォート編
https://blogs.yahoo.co.jp/sxxk8782390164/12592367.html

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(風の宮殿)
 さて、ジャイプールには街中にはマハラジャが居留した王宮シティ・パレス、その付属の建造物であるハワー・マハル天体観測施設ジャンタル・マンタル等の見所がある。郊外には水の宮殿ジャル・マハル、そしてマハラジャが以前暮らしていたアンベール城が残り、現在はインド像をタクシーにして登城するのが観光客の間で大流行している。

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(水の宮殿)
 いずれの建造物もアクバルが融和路線を後押しした事もあり、ヒンズーオリジナルの建築に多くのイスラーム建築の手法が融合したものとなっており見応えがある。

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(シティ・パレス)
 またジャイプールからアグラーを目指す道中にアクバルが築いたファーティプル・シクリと呼ばれる王城跡が残る。これは先に述べたアクバルがジャイプールのマハラジャの娘を后に選び、彼女の為にイスラーム様式とヒンズー様式を融合した新しい都をこの地に築き、それまでの首都アグラーから遷都したものだ。

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(天体観測施設 ジャンタル・マンタル)
 水利の悪さから14年しか実働しなかったものの、これまでの名君の「後取りが恵まれない」と言うジンクスを破り、アクバルとマハラジャの娘の間には4代目となるジャハーン・ギールが此処に生まれる事となる。

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(ファーティプル・スィクリ)
 こうしてアクバルはインド土着のマハラジャ達を融和路線で取り込んでいき、後取りも確定し、ムガル帝国の磐石な体制を築き上げた。此処から西へ40キロも走ればムガル帝国絶頂期5代目シャー・ジャハーンが築いた傑作タージ・マハールがおわすアグラーに到着する。

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(ファーティプル・スィクリ)
因みに何かと余り名前が挙がらない4代目のジャハーン・ギール。彼の墓はムガル帝国三大都市のひとつ、現在のパキスタンのラホールに存在する。詳しくは
パキスタン旅行記ラホール編
https://blogs.yahoo.co.jp/sxxk8782390164/12540966.html?type=folderlist