シルクロードを西へ!西安編1

 シルクロード…旅や世界史が好きな者にとってそそられる響きを持つフレーズだ。私にとってはイスラームの交易路を追う旅の一貫として、また私が尊敬する旅人、玄奘三蔵の歩いた旅路として、いつか訪れたいと切望していた旅先でもある。

 そんなシルクロードに関した私の三つの旅を、此処に一挙に纏めて紹介したい。第一部としてシルクロードのアジア側の基点となった街、中国の西安。第二部は蘭州からウイグル自治区迄、第三部はウズベキスタンの旅を紹介する。

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 先ず始めはシルクロードの東の基点となった街、西安。この旅は会社の三連休を利用した弾丸での旅となった。短い日程はちょっとのアクシデントが命取りになる。そんな少しの遅延も許したく無いこの旅で、試練は乗り継ぎの上海で待っていた。

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(上海空港 写真は引用です)

 西安行きの搭乗が待てど暮らせど始まらない。中国語のアナウンスは解らない。スタッフも「待ってくれ」的な英語しか話さない。その内搭乗を待つ乗客に飲み物と軽食が配られた。それが事態の深刻さを雄弁に物語っていた。

 数少ない日本人乗客と共に情報を集めた。そして解った事は、どうやら悪天候による遅延である事、出発が出来ないのでは無く、私達が乗る筈の飛行機が、悪天候により着陸すら出来ずにいる事。それは今夜中に西安に辿り着く事が不可能である事を示していた。

 悪い予感は的中し、我々は航空会社が手配した空港に近い宿で一泊せざる得なくなった。ホテル迄は送迎してくれたが、クレームを恐れてか、係員はあっという間にトンズラしてしまった。宿泊費は出るが、一人旅の者は一人部屋の追加料金はかかると言う。辟易していると、日本人の老紳士が相部屋しませんか?と助け船を入れてくれた。

 その後ホテルのフロントで電話を借り、西安の旅行会社に飛行機遅延の為、スケジュールが大幅に狂う事を連絡した。この時点でどれだけの乗客が出発を待っているか解らない。空港の営業が再開しても、最初の便で西安へ向かえるか解らない。下手をすれば行っても、戻るだけしか時間が無ければ行く意味が無い。

 しかしそんな私の不安を、現地の旅行会社の担当は、深夜に電話したも関わらずとても親切に応対してくれた。

さっくんさん、今貴方がやるべき事は、ぐっすり眠って疲れを取る事です。遅延に関しての事は私が最善を尽くします。」

 正直、小さな旅行会社が努力したところで、大きな航空会社の意向を変えられるとは思えない。しかも私は採算の合わないだろうたった一人の旅人だ。しかし、それ以上に旅人の不安を少しでも取り除こうと心から接してくれた彼女の気持ちが嬉しかった。

 中国人がモラルやマナーの悪い事は世界的に有名だし、否定出来ない部分も数多くあるのは事実だ。だけど中国のガイドや旅行会社の人々は洗練されてはいなくとも非常に真面目で熱心な人が多かった。

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(京劇 写真は引用です)

 以前訪れた北京で頼んだ京劇へのオプションツアー。北京名物の渋滞に嵌まり遅刻してしまった。その時ガイドが運転手にマジギレで怒鳴っていた。そして私達には泣きそうな顔して謝っていた。そんな彼の気持ちが京劇より嬉しかった。

 翌朝、いつお呼びがかかるのか?ホテルの庭先を逸る心で何度もうろついた。そして漸く出発が叶い空港へと向かう。待たされただけあって空港は足の踏み場も無い混雑っぷり。案内の係員は再びアッサリとトンズラ。

 慣れない中国語と奮戦しつつもなんとか我々は再開第一便に搭乗する事が叶った。こうしてたった二日滞在のうち、半日は潰れてしまったが、私は無事西安に到着する事が叶った。ホテルに入り荷物を置くと、私は鉄砲玉の様に西安の街へ飛び出した。