遥かなるトンブクトゥ16サヘルを越えて1

 眠れない夜が開けようとしていた。未だ暗い内にベッドから出た。一番乗りかと思っていたらアリが決意の朝の礼拝をメッカに向かい捧げている。ティメも眠い目をこすりながら出てきた。出発だ。と言うより出陣と言う気持ちが強い。しかしこんなに朝早く出発しても、帰りの飛行機のチケットは手に入るのだろうか?

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 そんな疑問は他所に車は走り出しモプティの郊外の高級そうな住宅地へと紛れ込んだ。訳が解らず狐につままれた様な私に構わず車はその中の一軒の家の庭に滑り込んだ。中から此処いらでは珍しいYシャツ姿のキリリとした男が手にノートパソコンを抱えて我々を出迎えた。??未だ私には顛末が掴めない。

 彼の庭の軒先で彼はノートパソコンを広げ、ガイドのティメが通訳となって私の個人情報をパソコンに打ち込んでいく。「ゲットだぜ!」彼が呟く。なんと彼はエアーマリの職員。我々は早朝にエアーマリの職員宅に押し掛けて、彼のパソコンを使い帰りの航空券をもぎ取ったのだ。なんて無茶苦茶なやり方だろう?だけどそれしか我々には方法が無いのだ。

 続けて我々はモプティの郊外にあるマリ国軍の駐屯地にて護衛して貰うべく軍人を手配した。中から一人は自動小銃、一人はショットガンを手にした制服姿の男達が現れた。その出で立ちが目指すトンブクトゥの実態を言わずもがなで伝えている。何だかんだで我々は時間を費やしてしまった。早速北を目指し我々はひた走った。

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 途中牛の大群を連れた遊牧民と次々にすれ違う。乾期に入り少しでも水の多い場所へとサハラのある北から南へと大移動の最中なのだろう。ドゥエンザと呼ばれる丁度行程の中間にある街で食料を調達した。

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 此処からトンブクトゥへ向けて道は幹線を外れダートになる。そのダートに入ろうとする場所に物騒なバリケードが張られていた。事件を受けて検問が行われていたのだ。もし軍人を雇っていなければ我々は此処で門前払いだったに違いない。アマドゥの的確な判断が我々の前途を繋いでくれた。門番のところへ軍人が駆け寄る。

「要人をトンブクトゥまで護送中だ。」

 とでも伝えたのだろうか?ゲートが開かれた。北へと続くアフリカ特有の赤い土の道の向こうに荒々しい岩山が我々を歓迎するように出迎えてくれた。