遥かなるトンブクトゥ15ドゴンの里4

 途中で4WDなのにスタックしてしまうと言うハプニングはあったものの、再びバンディアガラの断崖の天辺で壮大に広がるアフリカの大地を堪能しドゴンの里を後にした。そして麓の村バンディアガラでアマドゥからの最後のメッセージを受けとる事になる。私がマリにいれるのも、最早後二日。明日朝航空機でトンブクトゥへ向かい一泊し明後日早朝バマコへ戻りその夜マリを立つ。

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 ガイドのティメと共に夕食を済ませ電話を待った。

さっくんさーん!」

 恒例の哀調を持ったアマドゥの声の響きが更に哀調を帯びていた。

「非常に無念な報告になります。飛行機がキャンセルされてしまいました。」

 再び私は我を失った。心配したティメが固まった私から携帯を手にした。マリの航空会社は過激派の襲撃を恐れトンブクトゥに飛行機を一泊させるのを嫌い、明日の便をキャンセルし、明後日の早朝トンブクトゥへ飛び、トンボ返りするフライトに変更してしまったのだと言う。これではトンブクトゥへ飛んでも見れるのは飛行場のみだ。

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 いつもは大人しいティメも「チッ!なんてこった!」と舌打ちして立ち上がった。重い、重い、雰囲気が立ち込めた。このままではドライバーのアリにもガイドのティメにも危険に巻き込んでしまう。こうなったら帰国のフライトを棒に降っても単独トンブクトゥを目指すか?車も飛行機もダメなら船と言う手がある・・・・

 そんな事を私なら考えかねない。それをアマドゥは解っていたに違いない。重い沈黙を破ったのはまたしてもアマドゥだった。

さっくんさん、どうしても行くと言うのですね・・・」

 私が不退転の意思を告げた。

「解りました。最期の手段です。往きは車を使い、明後日バマコに戻る飛行機を使いましょう。勿論車は危険を伴います。だからマリ軍に護衛を要請させて頂きます。」

「アマドゥ・・・かたじけない。」

 電話越しに私は深く頭を下げた。トンブクトゥへのドライブを最後まで尻込みしていたドライバーのアリも護衛の条件で快諾してくれた。ガイドのティメは胸を張ってこう言った。

「こんな事件が起きて、もう当分私に仕事は回って来まい。これがラストだ。とことんお前に付き合ってやる!」

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 今から思えば、この彼の発言、彼は現地人だから、この事件の持つ意味、そしてこれからマリに起こる事、予測していたのかもしれない。その上での覚悟の言葉だったのかもしれない。そう思うと今でもグッと込み上げてくる想いがある。ありがとう!再び彼等に頭を深く下げた。

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  しかしそれはトンブクトゥへ行ける事を約束するものでは無く、可能性を繋いだに過ぎないと言う事は私も十分理解していた。何故なら私達はトンブクトゥから帰りの航空券さえ未だ手に入れてない。軍人も手配しに行かねばならない。そしてその後400キロ以上の道を走らねばならない。普通の道では無い、半分はダートだ。そして最後にニジェール川の渡河が待ち構えている。辿り着けたとしても日没後で真っ暗闇と言う事も十分有り得るのだ。しかしそこに1%でも可能性が残されているとしたら、私はそれに賭けたいと思った。

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