モロッコ旅行記11
朝、未だ陽が昇らぬうちにテントを出て砂丘へと登った。中腹に辿り着く頃陽が昇り始めた。
漆黒から青へ、そして赤へ。陽を受けた部分は燃える様に赤く、影の漆黒と、赤と黒の情熱的なコントラストの大海原が永遠と拡がっている。
もし昨日私を此処まで連れてきてくれた駱駝が去ったとしたなら、私に生きて帰れる術は無い。
目の前に拡がる広大な自然を前にして、人間の存在等なんてちっぽけなものだろうと思う。
しかし、しかしだ。昔のイスラームの旅の商人達は、この砂漠を越えて旅を続けたのだ。
彼等の旅に想いを馳せれば、人も無限の可能性を秘めているのでは無いかと思えてくる。
私には到底見えないが、きっと彼等には見えていたのだ。其処へと辿り着く道が。
これ迄多くのイスラーム圏を旅してきた。中国西方のゴビ砂漠、ウズベキスタンのキジルクム砂漠、イスラームの故郷アラビア半島も、そして此処サハラも…。
イスラームを旅すると言う事はある意味砂漠を旅する事でもあった。
私は永遠の様に続く砂漠の大海原の南方を熱い視線を注ぎ続けた。
彼等が命を賭けて迄砂漠を渡ったその先にはどんな街があるのだろう?彼等は命を賭けて迄どうして其処へ行ったのだろう?
いつかきっと旅して見せる。
いつかきっと見届けて見せる。
彼等が人間の可能性に賭けて迄向かった、その街に。
私はサハラ砂漠で誓いを立てた。
この念願は二年後2011年暮れに、紛争突入ギリギリのタイミングで叶える事が出来た。
この誓いの続きは此方(遥かなるトンブクトゥ)から参照して頂きたい。