不都合な真実

 パキスタンにて私はラホールからイスラマバードへ向かう道中、ずっと走る先を見つめ続けていた。これよりずっと走った先に峠がある。カイバル峠、アフガニスタンに続く峠だ。その道はアレキサンダー大王が通った道、玄奘三蔵法師が通った道、旅人としていつか通りたい峠、しかしそれは輪廻を繰り返さねば叶いそうも無い道・・・

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 昨年、シリアで邦人ジャーナリストが散った。それはただ一人のジャーナリストの死を意味するのでは無く、ジャーナリスト達を口封じしたかったから彼は見捨てられたのだと私は解釈している。彼の死語、自己責任と言うバッシングの嵐が吹き荒れたが、それを影で煽っていたのは政治家達である事に間違いは無い。何故って時に彼等は政治家にとって不都合な真実を持ち帰って来てしまうから。

 インドネシアの島に大地震が起き津波で大きな被害が出た。世界から報道陣や救援部隊が詰め寄せた。勿論彼等の活躍により惨状が明らかになり、多くの犠牲者を救う事が出来たのは事実だ。その反面で皮肉な結果も発生した。

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 今まで観光客など殆ど訪れなかった素朴な村に、急遽先進国の人々が押し寄せた。彼等は公的機関の人々だから村民や旅行者等と違って値切ったりしない。先進国の物価のまま賃金を支払う。その結果、通訳、ドライバー、ホテル経営者等彼等に携わる人々は急激に富を蓄え、結果被災した人々との間に大きな格差を生む結果となってしまった。

 でもこれは嵐の様なもので、救援部隊や報道陣が去ってしまえば自然元に戻っていく。しかしそんな状況が20年も30年も続いている国がある。ソビエトの侵攻以来紛争の絶える事が無いアフガニスタンだ。

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 アフガニスタンでは世界各地から結集する救援活動する為にアフガニスタン入りした人々が落とす金に肖れる人々とそうでない人々の間に決定的な格差が生まれてもう何十年となる。

?? もうこうなってしまうと現地で彼等が落とす金に肖る人々はそれが当たり前の生活になってしまう。現地では紛争特需でホテル等はたいした設備が揃っていないホテルが東京並み宿泊料を取ると言う。

 そんな彼等はそれが紛争あっての事だと言う事は良く理解している。紛争で困窮している筈の現地の人が紛争を望んでいる、そんな歪な現象が起きている。

 勿論現地ではそんな金に肖れない人々が殆どだ。街は紛争特需でインフレが続くが、決して国が豊かな訳では無いので、そうした肖れない人々にとっては必要不可欠なものさえ手に入れられない辛い状況が続いている。救援活動した事で皮肉にも格差社会を増長させてしまう。此処でもそんな現象がが生まれ、そしてそれが常態化してしまっている。そして難民キャンプにいる人々は更に過酷な生活を強いられている。

 そんな現地の現状を他所にODAを支払ったり、救援部隊を送るだけの政治家は結果を見ずに良いことをしたで完結してしまっているであろうし、我々一般市民も同じ。現地にお金を送りましたとさ、救援活動を派遣しましたとさ、これにてめでたし、めでたしで終わった筈だった。

 しかしジャーナリスト達が命を張って、こんな現実を持ち帰って来られては、政治家にとってそれはさぞかし不都合な真実に違いない。

 そんな中アフガニスタンに今年も厳冬がやってきた。そしてひとり、またひとり、子供達、老人、女性と難民の命が奪われていく。