洒落怖な寄生虫、だけど実は・・・

今年のお盆はいつになく怖い話をネットで見まくった。そんな中で人が寄生虫に支配され寄生虫の産卵の為に水場へと導かれると言う怪談があった。物語にはきちんとその寄生虫の実名まで書かれていた。

 不思議に感じたらググらないではいられない私。早速ググって見れば、なんとその寄生虫は実在するでは無いか!しかもその寄生虫の実態は、怪談で書かれていた様に宿主をコントロールし産卵の為に水場へと導くと言う事実も実際の事だったから尚更驚きだ。勿論人間に寄生すると言う事は通常有り得ず、そこだけは怪談としての創作だった。

 それにしてもその針金虫は驚異のおぞましい寄生虫だ。しかも普通に日本にも存在する。針金虫は川に生息している。卵から孵化すると幼虫はまず川ゲラや蜻蛉等の幼虫に食べられて寄生する。カゲロウはやがて成虫になると川から飛び出し地上を飛ぶ。そしてそのカゲロウは地上に暮らすカマキリやカマドウマ、コウロギ等に捕食される。

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 針金虫はカゲロウを捕食した地上のそれらの昆虫 の体内に入って初めて成虫に進化する。しかし彼等がいるべき場所、つまり産卵すべき場所は川。そこで彼等のおぞましき習性が発揮される。針金虫はあるタンパク質を宿主の体内に送り込み宿主の脳に刺激を与える。未だ完璧な仕組みは解ってはいないが、すると宿主は何故か水場、即ち川へと誘導されてしまうのだそうだ。そして誘導された虫はまさか、まさか川に入水自殺を遂げてしまうのだ。針金虫はそこで宿主の体から脱出して帰るべく場所へ戻ってくるのである。

 寄生した宿主の脳を操り自殺に追い込んでしまう。なんと恐ろしい寄生虫であろうか!正に怪談の主人公にするに値する寄生虫であるが、実在するだけ更に恐ろしい。しかし更に私を驚かせた事実、それはとある研究の結果、この寄生虫の存在こそが、日本の渓流と山の自然のバランスを保っている事実が浮かび上がったと言う事だ。

 日本の渓流にはヤマメやイワナと言う美しい渓流魚が生きている。彼等の胃を調べると驚く程カマドウマが出てくると言う。川の中にしか住めない彼等がどうして地上に暮らすカマドウマを食べられるのか?偶然川に落ちたでは腑に落ちない程の量だったのだが、寄生虫に操られた結果だったのだ。

 さて研究家は通常通り渓流魚がカマドウマが多く捕食できる環境と、そうではない環境を作り上げ川にどの様な影響が起きるか実験を行った。するとカマドウマを渓流魚が捕食すれば、川に住む水棲昆虫が増え、彼等が藻を食べるから藻の発生が押さえられ、水棲昆虫が落ち葉を食べ落ち葉の分解が早まる。しかしカマドウマを食べられない環境では水棲昆虫は渓流魚に食べられてしまうから、藻が多く発生し落ち葉の分解も進まない。だとすれば川の環境は変化し水質は落ち、やがて渓流魚が棲めない環境になってしまう恐れさえある。

 つまり針金虫が大地からカマドウマ等の渓流魚の餌を運んでくる事により、渓流の環境が保たれていると言っても過言では無いのだ。一見おぞましい習性に思える針金虫の存在。ただ寄生するだけなら川に住む動物だけに寄生した方が楽であろうに。折角苦労して昆虫を操って水死させたにしろ脱出する前に渓流魚に食べられてしまっては自らの命も無いと言うのに、何故その様な一生を送るのだろう?渓流の自然を守る為に 神が創造しなさったのか?

 見た目も気味悪く、習性もおぞましい針金虫だけど、奴等がいなければ日本の渓流にはヤマメもイワナも姿を消してしまうかもしれない。生き物ってどんな生き物にも意味があり、それらが支えあって今の地球があるんだなと。

 見た目が悪い、習性が気にくわない、そんな理由で彼等を亡きものにしてしまえば、もっと大きな大切なものも失われてしまう。地球に暮らす生き物って結局みんな繋がってるんだなと。

怪談をきっかけにググりまくった結果、なんか感動してしまった今年のお盆でした。

詳しく知りたくなった方は此方ナショナルジオグラフィックの記事に詳細が載ってます。