遥かなるトンブクトゥ21生還

 空港に着くと今度こそ空港は人で賑わっていた。これなら無事に飛行機は出発しそうだ。とは言っても事件のせいで観光客は一人もいないので土産屋は閑古鳥が鳴いている。そんな土産屋で私はTシャツを購入した。背中に

I have been to Tombouctou
and Back

と書かれているものだ。多分ルネ、カイエの到着と生還を表しているのだろうが「私はトンブクトゥを訪問し、そして生還した。」と言う言葉の響きは正に今の私の心境を表している様だった。

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 そんな事をしているうちに出発の時間が迫った。ティメ、アリ、二人の軍人、順々に肩を抱き合い別れを惜しむ。お互い「ご無事で!達者でな!」と。その言葉は紛争の中、必死に生き抜いているだろう彼等に向けて、今も尚消えずに胸の中で響き続ける。

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 最後の最期まで軍人達は手を抜かない。人がごった返す出発ゲートで私が襲撃される事を恐れ、私をひっそりとした到着ゲートから飛行機にエスコートする。まるでVIPの飛行機搭乗。タラップの最上段から両手を大きく降りティメとアリに別れを告げる。タラップの下の二人の軍人に敬礼を済ませ機内に消える。万感の想いを乗せてたった14人乗りのプロペラ機はトンブクトゥを離陸した。

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 飛行機はあれほど苦戦し走り抜いたサヘルの道のりをあっという間に南へ向けて飛んでいく。乾いた大地を貫いて流れるのは勿論ニジェール川だ。やがて乾いた大地を緑が覆えば、モプティに飛行機は降り立つ。此処で一服を済ませバマコまで戻るのだ。

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 飛行場の待合室で暇を潰していると誰かしかが私の肩をポンと叩く。訝しい表情で振り向いた私の顔が一瞬で崩れる。此処周辺では珍しいキリリとしたYシャツ姿の...そう!往きに私が自宅に押し掛け帰りのチケットを手配して貰ったエアーマリの社員ではないか!

「君がちゃんと無事戻ってくるか心配で探しに来たんだよ!」

 旅も終わりに近づき感傷的になっていたか思わず涙ぐんでしまう。アフリカの暖かい人々に支えられて心許ない私の旅が完結出来た。胸一杯になりながら彼に見送られて再び機上の人となる。

 そこから再びニジェール川に沿って飛行機は飛び、そしていよいよ出発の地バマコへと私は戻って来た。