遥かなるトンブクトゥ13ドゴンの里2

 ガイドのティメと共にバンディアガラの急な断崖をドゴンの村落を目指し下っていく。ガイドのティメはドゴン出身だ。先ずは自分、そして家族全員の分の「元気ですか?」を尋ねるドゴン独特の長い挨拶を交わしながら崖を下る。

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 下って行けば先に白人の老人の団体がガイドに引率され崖を下っていた。白人は体格は立派だが、彼等の足腰はそれを支えるにはアンバランスな程弱い。だから年を取ると彼等にはこんな崖道は苦手なジャンルだ。それをガイドが手を繋ぎエスコートする。しかし老人は一人では無いからエスコートする人手が足りない。すると村に近づくと子供達が一斉に集まって老人達の手を取りエスコートを開始した。彼等にとっても飴玉やラッキーならチップを貰えるから観光客は格好の遊び相手でもあるのだ。


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 此所で私はハッとした。子供は大人の背を見て育つ。彼等はこうしてガイドの仕事を覚えていく。ティメもそんな感じだった事だろう。そしてその様子を年端のいかない乳児も見ている事だろう。それが伝承で伝わって、ニジェール川のほとりの村に私が訪れた際、乳児が突然私の手を取って私を驚かせたのだ。

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 三角屋根の茅葺き屋根が特徴のドゴンの穀物倉が立ち並ぶ村落の風景を眺めていると遙々アフリカの大地にやって来た事を実感する。幼い頃テレビや本で眺めていたイメージとピッタリと一致する。しかしあの頃、この風景を眺め、現代でも原始的な生活をしている人達に驚き、そして現代の文化の恩恵を全く受けずに暮らす彼等に幾ばくかの憐憫を感じたものだ。しかし実際現地を訪れ、彼等の生活を目の前にし、彼等と触れ合っていくうちに、私が幼い頃抱いた感情は、完璧に覆されていった。

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 村の中央には特別に背の低い屋根を持つ建築物がある。これは村長達の会議場なのだそうだ。何故背が低いかと言えば、村の政治を話す時、興奮し立ち上がり暴力を振るう事が無いよう立ち上がれないくらい屋根を低く作るのだそうだ。

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 村を出て次の村へ向かう途中、石ころが私の足元を過った。子供達が悪戯したのだ。足元に転がしたのだから悪意は無い。シャイな子供達が気づいて欲しくて転がしたのだろう。しかしそれに気づいたガイドのティメが烈火の如く怒った。普段は大人しいくらいの男だ。私は慌てて止めに入った。

「彼等は悪気はない。許してやってくれ!」

ティメはキッパリとこう答えた。

「これは教育です。私は同じドゴンの子供が観光客に石を投げるなんて許す訳にはいかない。そんなままで育って欲しくない!」

 今、我々の社会に、そうキッパリと同族の子供を叱れる大人はどれくらいいるだろう?

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 其処には我々が先進国だと自惚れている内に忘れてしまった大切な事が脈々と息づいていた。