遥かなるトンブクトゥ12ドゴンの里1

 モプティからドゴン族の暮らすバンディアガラの断崖を目指し遥か東に向かう。マリの旅の中で此処だけがニジェール川からかけ離れた立地となる。マリは乾燥帯に属しニジェール川に近くなければ人の暮らしは営み辛い。では何故ドゴン族はこんな過酷な大地で営みを続けるのだろう?

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 その訳は塩金貿易が盛んになりマリ帝国イスラーム化するとマリ周辺は急速にイスラーム化が進んだ。しかしドゴン族は自らが信仰するアニミズムを貫く為、イスラームとの争いを嫌い、こんな人里離れた大地に居を移したのだ。

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 ドゴン族のアニミズムはとても不思議な宇宙観を持つ。ジャッカルの足跡で吉兆を占う様なシャーマニズム的風習もあるが、天文学に於いては天体望遠鏡が無ければ観測出来ない筈のシリウスの軌道について、未だ先進国も確定出来ていない事実が伝承に残っていたり、宇宙人説も残る不思議な民族だ。その真偽は兎も角、独特の世界観を持った民族である事に間違いは無い。

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ジャッカルの足跡占い
 ドゴン族はバンディアガラの断崖絶壁に寄り添う様に幾つかの集落を形作りそこで暮らしている。旅人はガイドと共に断崖をトレッキングしながら村々を巡る事になる。先ず初めに断崖の頂上の基点となる村サンガに我々は向かった。

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 ドゴンの村々には未だガスも水道も電気も通っていない。我々の泊まるホテルも一定の時間だけジェネレーターで電気を起こすだけ。水はミネラルウォーターが頼りだ。驚いた事にこんな僻地であっても、私が日本から訪れた事を知るとドゴンの人々からこの年に起きた東北大震災を心配してくれる声がかかった。勿論それは嬉しかったが、私は原発の事故を聞かれたらどう答えて良いかと狼狽えた。

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 何故なら彼等は電気さえ使う事無く暮らしている。原子力発電と言う、未だ人類が制御しきれない、廃棄物の処理法まで解らない発電に頼り、湯水の様に電気を使い、そして挙げ句の果てに事故を起こし地球を汚し、それでも尚それに頼らざる得ない我々。それを電気を使わない彼等にどう説明すれば良いのだろう?私には言葉が見つからなかった。幸い聞かれる事は無かったが...。