遥かなるトンブクトゥ5モプティへ

 セグーを発って今日はトンブクトゥと中間の位置にあるモプティを目指す、そこでアマドゥからその後の旅程の返答を待つ事になる。今日も途中の小さな村に休憩がてらに立ち寄りながらの旅となった。その小さな村で不思議な事が起こった。通常私達に群がるのは子供と決まっているが、その村ではティメのガイドに着いていく私の後ろに老人達やら子供やらが行列を成して着いてくるのである。仕事や家事に追われる人を抜かした村人全員を引き連れての村内一周になってしまった。

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 そこで私は得意の折り紙で触れ合いに挑戦してみるも此処では呆気なく外してしまった様だ。何か異様な雰囲気にティメに助け船の視線を送れば、ティメによるとどうやら私達は医療視察団か何かに間違われてしまったらしい。カメラをぶら下げたツアー客とは大分違う出で立ちなのでどうやら彼等は勘違いしてしまった様だ。そしてそれはそれだけ此処の医療の問題が深刻である事を表している。

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 先ず最初に我々は医者では無い事を知らせる事が肝心だった。それでも彼等は真剣な表情で救援を求めてくる。持ち合わせた救急セットで切り傷、擦り傷くらいの消毒はしてあげられる。しかし飲み薬が必要なものは求められても、必要であっても心を鬼にして断った。私がネパールで現地の薬を買い自己判断で利用し大変な思いをした様に、飲み薬は現地の人の体質によって合う合わないがある。それ以上に彼等に日本語で書かれた注意書が読める訳が無い。親切で与えたものが逆に彼等に不幸な結果をもたらせてしまう事になりかねないのだ。

 私は掠れる声で彼等に返した言葉は

「病院に行ってください。」

 だった。胸が締め付けられそうだった。何故なら此処には病院は無いし、あったとしても彼等に払えるだけの現金が無いのだから・・・

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 なんか切ない村訪問になってしまったが、気を取り直して北上を続ける。途中曜日市に出くわした。曜日市と言っても日本のそれとは異なる。日本では何でも揃った上での曜日市だが、此処では曜日市だけが唯一の買い物のチャンスだ。それだけに必要な物を買おうと異常な程の盛り上がり様だ。

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 マリの中央部には多くの民族が共存している。その理由は各民族の住み分けが確立しているからだ。バンバラ族は農耕、ボゾ族は漁業、フラニ族は牧畜と言う様に。そして各々の民族がこうした曜日市で現金収入を得たり物々交換を行う事で繋がりを保ち、足りないところを補い合いながらこれまで仲良く暮らしてきた。

 アフリカと言うと民族紛争と言うイメージを持つ人も多いが、それはヨーロッパが此処を植民支配した時に持ち込んだ資本主義社会が、偏った民族に権益を与えた事により格差が生じ、それまでの彼等のバランスを破壊してしまい起きた事だ。

 幸か不幸かマリに嘗てあった金山は今は枯れ、石油も採れないこの地にはヨーロッパが欲するものが無かった事。この地に巨大なデルタを形成するニジェール川の恵みが、漁業、農業、そして牧畜に平等な恵みを与えた事。それが最近まで昔ながらの民族同士の仲良い付き合いをマリに約束していたと言えよう。