遥かなるトンブクトゥ1バマコ到着

 バンコク、ナイロビで二度乗り継ぎをする長い飛行機の旅も、それまでに起こった旅のゴタゴタから比べれば信じられない程何事も無く、旅の期待もあって全然長いと感じる事無くあっけない程に私はマリの首都バマコに到着した。空港には民族衣装を纏った現地旅行会社のボス、アマドゥが

「ようこそ!さっくんさーん!」

独特の哀調を持った響きで私を出迎えてくれた。

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 彼の車に乗りホテルまでの間、車窓から眺めるマリの人々の暮らしぶりに、もう顔を車窓から乗り出さんばかりに心が踊った。ホテルで挨拶と両替を澄まし、本日は本格的な出発となる明日を前に自由行動だったので、バマコの街のダウンタウンまで彼の車で送って貰う事にした。

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 彼と明日からの日程等の話に盛り上がりながら、もう少しでバマコの街中に到着すると言うタイミングだった。アマドゥの携帯がけたたましく鳴った。電話に出る彼の語尾が徐々に高くなる。最後は怒鳴る様な悲鳴の様な口調だった。現地語なので何を喋っているのか解らないが、会話の中にトンブクトゥと言う言葉が確実に聞こえた。私は嫌な予感がした。胸騒ぎがした。私の直感は良くも悪くも実に良く当たるからだ。

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 彼が私を降ろした場所はバマコの街の中心、アルチザン・マーケット。民芸品のお土産中心のマーケットだ。早速土産屋のお兄さん達が集まってくる。

「今日は来たばかりだから、旅の終わりに必ず戻ってくるから!」

 アフリカ人特有の猛烈なパワーに押されてカメラを構える事さえ圧倒されてつつアルチザン・マーケットからグラン・マルシェと足を進める。原色の衣装に身を包み頭上に商品を乗せ恰幅の良い体で道を練り歩くマリの女性達。辺りに響き渡る客引きの声、品定めする人々の熱気、アフリカ特有の人々の熱気にのぼせそうになった。

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 喧騒を抜けるとやがて官庁街の趣となり、大通りを渡るとそこにマリを貫く大河ニジェール川の畔に出た。エジプトはナイルの賜物と言う言葉があるが、ニジェール川もマリはニジェール川の賜物だと言える。其ほど大切な川であり、今回の旅もドゴンの集落を抜かし殆どニジェール川に沿っての旅となる。そんなニジェール川に向かって、初対面の挨拶を交わした。川面では漁師が子供と投網を投げていた。それは本当に穏やかな、平和な光景だった。

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 ニジェール川を渡る頃、マリ最初の夕陽が落ちていった。暗くなった道をトボトボとホテルへ向かう。突然背後からけたたましいクラクションが鳴った。振り替えれば乗り合いバスだ。勿論私は同乗させて貰った。が、うっかりしていて私は両替したばかりだから小銭を用意していなかった。

「仕方ねぇ奴だな!今回ばかりは見逃してやるぜ!」

 アフリカの庶民の暖かさに感謝しつつ私はホテルの扉を開いた。そこにアマドゥが待っていた。

さっくんさーん!大切なお話があります!」

 彼は独特の哀調のある響きで私をホテルのレストランに案内した。マリの熱気溢れるマーケットが全てを忘れさせてくれていたが、私の感じた嫌な予感が再び胸に込み上げてきた。