遥かなるトンブクトゥ序6出発

 航空会社の立て続けのフライトキャンセルの次に私の旅に立ち塞がった驚異は乗り継ぎ先のバンコクを襲った洪水だった。日に日に水嵩は増し洪水はバンコクへと迫っていった。仕事の合間私は携帯を握りしめて顛末を祈る様な気持ちで情報を収集した。出発約二週間前、遂にバンコク北部のドンムアン空港が冠水し機能を停止した。私が利用するスワンナプーム国際空港へもあと僅か!

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胃の痛む様な二週間を経てなんとかギリギリのタイミングで空港は冠水を逃れた。やっとの事で迎えた出発の朝、電車に乗れば人身事故で電車が遅れた。これまで私の旅を支えてくれた旅の神様が

「今回ばかりは行かない方が良い!」

と囁いている様だった。しかし私の決意は固い。今回ばかりは神様の忠告も耳に入らない。

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そして向かったチェックインカウンター。此処でも問題が生じた。私のビザの出発日について係員がイチャモンをつけ始めたのだ。最近航空会社は旅人のビザを厳しくチェックする。旅人がビザの不手際で入国できず、その旅人を出発地まで送り戻さねばならないリスクを軽減させたいからだろう。しかし係員とは言え全ての国のビザに精通している訳では無い。それに私はマリ大使館に何度もコンタクトを取っており自分のビザには自信がある。

しかし石頭の係員は自分の理論を並べ立ててくる。それを左手で制しながら右手で携帯で電話をかける。軽く電話で会話を交わして係員に電話に出るように促した。係員は会話を制され、電話に出るように促されたのが不服そうだったが、こちらは思いっきり上から目線で冷ややかに彼女にこう言い添えた。

「マリ国大使館です。貴女に説明があるそうです。」

係員は驚き私の携帯を手にすると何度も頭を下げながら説明を聞いていた。滑稽だった。そして

「大変失礼致しました。」

と私にも頭を下げ手続きを済ませるとやっとパスポートが私の手元に返ってきた。こんな事で大使館のお世話になるとは思っていなかったが、これも日頃綿密に大使館と連絡を取っていたのが効を奏した。私は踵を返すと軽く握りこぶしを握った。

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ようやく、やっと、マリへの扉が開かれた!