ダマスカス2

 ウマイヤドモスクに寄り添う様にエンジ色のドームを持った建物が建っている。アイユーブ朝創始者であり、第3次十字軍を撃退しアラブを守った英雄サラーフ・アッディーン(サラディン)の霊廟だ。エルサレムを陥落し各地の領土を奪い返したアラブで大人気を誇る英雄の霊廟だけあって、訪れる巡礼の信者達が後を絶たない。

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モスク周辺にはレストランや商店が建ち並び市民の憩いのスペースとなっている。メインのスークは真っ直ぐな大通りだったが、モスクより先は本来のアラブのスークらしく道は複雑に折れ曲がる。狭い道には藤棚が設けられ強烈なアラブの陽射しを遮ってくれる。乾燥したダマスカスではそれだけで体感温度がグッと下がる。

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商店街を抜け住宅街に入ると急に静かな雰囲気に包まれる。アラブの住宅は細い道の両側に石造りの家並みが続き、窓も小さく中を伺う事が出来ない。それはイスラームの女性の服装からも解る通り女性を外部からの視線から守ると言う習慣に基づいたもので、勿論昔では敵襲から守ると言う役割も果たしていた。アラブの曲がりくねった街作りも敵の容易な侵入を防ぐ為の設計である。

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(サラフ・アッディーンの銅像とダマスカス城壁)

ではそんなアラブの家の内側がどうなっているのか?それは歴史的な建築を利用したレストランやホテル等を利用する事で、その内部を窺い知る事が出来る。幸いダマスカスにはそうしたレストランが幾つもある。中に入れば閉鎖的な外側とは打って変わり驚くほど開放的で豪華な作りに驚く。何処のパティオもその中心に水盤を置き、その水盤から流れる水音が優しい響きを醸し出している。

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外側に見栄を張らない分、家族と過ごすプライベート空間に美意識を集中させる事がアラブ流の建築美意識なのである。私が訪れたのはオスマントルコ時代に築かれた中庭を利用したレストラン。アラブの雰囲気に包まれたこれもまた平和なひとときだった。