タマヤンジー寺院の亡霊

 慌ててダートの道を駆け出した。しかし砂に捕まって思うように運転できない。最後に残っていただろう車が老い抜かしていく。私は所々で自転車を押しつつ先に進んだ。

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100円レンタルの自転車にライト等と言う最新兵器はついてない。手にする100円ショップのLEDなんて何の意味も成さない。辺りは真っ暗、おまけに新月で月明かりも無い。でも道は分岐はあっても単純なもの。道なりに進めば戻れる筈だった。

 事実それ以降は順調に進み、それは丁度そのタマヤンジー寺院辺りを擦り抜ける頃だった。左手にその不気味なばかりのシルエットが浮かんでいたのを覚えている。突如背後からバイクが通り抜けて前方で急ブレーキを踏んだ。「こっちだったっけ?」彼等は私に尋ねる。「いや解らない」彼等はそのまま先に進んでしまった。私も反射的に彼等の進んだ先に行ってしまった。その時変な感触があった。何かチャンネルが変わってしまった様な・・・脂汗が体を過ぎった。

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(タマヤンジー寺院)
 何か解らぬまま先に進む。バイクの彼等は最早跡形も無く先に進んでしまったが、暫く進むと幾つもの蝋燭が光っている。狐につままれた様な感じで近づけば、なんと現地の人々が野営している様だ。どうして此処に現地の人が?しかも集団で?不思議に思ったが今はそんな場合では無い。すかさず私はニャンウーに戻る道を聞く。

「まず左に曲がって右に・・・」  

やっぱり私は道を間違えたのだ。私は一気に不安になり自転車を走らせる。するとふとした時に私の往く手を阻んだのはなんとパヤーだった。なんでこんなところに?私は一瞬訳が解らなくなった。が、道は分岐はしていなくても真っ直ぐとは限らない。道が暗過ぎて私は道が曲がっているのに気づかなかったのだ。

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(ゴドーパリン寺院)
 暗くても木さえあれば上を見上げ、木陰と漆黒の空の境界を追う事で道の曲がり具合の判断がつく。変に広い間隔がある場所に辿り着いたらそこは要注意。分岐があるかもしれないと言う事だ。漸く正式な道を発見した私は再び自転車を漕ぎ出したが、私の判断が甘かった事を思い知る。そこに木があれば良いのだが、荒野となるとダートな故に何処が正式な道だかすら解らなくなってしまうのだ。

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アーナンダ寺院
 最早途方に暮れどうにでもなれと自転車を漕いでいると、再びなんと蝋燭の灯があるでは無いか!吸い寄せられる様に私はそこへ向かった。それは不思議な光景だった。蝋燭を燈し何か式典を始める様な・・・でも現地の人なら何も人里離れたこんな所に来なくても立派な寺院が沢山あると言うのに・・・

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(シェーズィゴン パヤー)  
しかし事態はそんな彼等の身元を怪しんでいる訳には行かない。私は黒いドレスを纏った女性にニャンウーへの戻り方を聞いた。すると彼女は困った様な表情。すると隣の白い正装の男性が私の肩を抱いて

「此処をまっすぐ行ったら右、そして次も右に曲がるんだよ!グッドラック!」

と言った。最後のグッドラックだけが妙に心に響いた