バガン遺跡を疾走する

?腹拵えが出来たら休む間もなく散策開始、壮麗なアーナンダー寺院を鑑賞し、その後脇道を入った所にある名所を訪れながらニューバガンに向かう。そこから舗装路に沿って見所を潰しながら一番名所が集まるオールドバガンに入る。こうすれば一回りのルートが出来る。先に運転しずらく迷い安いダート部分を終らせる寸法だ。

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(スラマニ寺院)
 こうしてダートの脇道に私は入った。名前通り?スラリとした巨大さが印象的なスラマニ寺院、そしてピラミッド的な何処か不思議な雰囲気を持ったタマヤンジー寺院を見学した。この寺院は明らかに他の寺院と様式が違う。違うばかりか馬鹿でかいから余計目立つ。自分が王位に付きたいから親を暗殺し王になった王が、せめてもの供養にと築いたそうだが、結局彼も暗殺されたそうで建設は途中で頓挫、だから今の様な姿なのだと言う。地元では夜になると幽霊が出ると言われる。後でそんな噂が私を縮み上がらせる事となる。

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(タマヤンジー寺院)
 そんな事は露も知らず私の自転車は奥を目指す。乾季のダートは砂状になりハンドルを取られ、所々押すしかなかった。そんな事は気にもせず名も無いパヤーも見回るがそんなことをしていたら何日いても終らない。だって此処には数千のパヤーがあるのだから。途中放牧の牛の集団に巻き込まれそうになりながら、何とかニューバガンまでたどり着く。

 そこで目指したのがローカナンダ・パヤー。そこからはマンダレーでも眺めたエラワディー川が眺められる。黄金の仏塔は船を行き交う人の灯台の役目も果たした事だろう。今でも素朴な小船が村人を対岸へと運んでいく。

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 此処から眺める夕陽もとても美しいと聞く。聞いただけでそれが理解出来る風景だ。ミャンマーにはなんて夕陽の名所があるのだろう!

 そこでふと気付いた事がある。人が対岸に渡ってはいるが、対岸は見渡す限りの大平原だ。インドの聖地バラナシでは西岸に当たる場所は死者の世界を表し人は住まない。エジプト・ルクソールでもそれと同様の考え方がある。ツタンカーメンを葬った王家の谷もナイル川西岸に位置する。此処も同様なのだろうか?私が知り得なかった疑問の一つだ。

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 途中で昼食を摂りつつ舗装の道に戻りオールドバガンを目指して遺跡散策は続く。メインストリートに戻れば車も走る。車は仕方ない。現地人のバイクも仕方ない。でも鼻についてしまうのは電動自転車だ。こっちがアップの道に苦しんでいるのにスイスイ抜かしていきやがる。

 因みにミャンマーで自転車に乗っていると、後方から来た車は必ずクラクションを軽く鳴らす。最初は日本式に「避けろ!」のサインなのかな?と慌てたが、これは「抜かすからね!」のサインなのだ。慣れるとこれが無い方が怖い!ミャンマー運転手の優しい配慮なのだった。

やっとの事でメインのオールドバガンにたどり着き、主な寺院やパヤーを順番に回った。一日が暮れようとしている。最後の総決算の夕陽を見るのに目指したのは、現地で情報を入手したPyathada 寺院。場所は朝印象に残ったタマヤンジー寺院よりずっと先にある。つまりダートの道を進んだ先だ。私は夕陽を見たいばっかりに後先考えずにそこへ向かった。

そして二度目の夕陽もやっぱり感動的だった。日没を控えた強烈な西日は自慢のHDRも役立たぬ程の逆光を醸し出す。普段ならお手上げの風景も此処では逆光が水墨画を描きあげる。

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やがて日の入りの時となれば、その水墨画に火が灯り

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炎上するかの様に真っ赤に燃える。

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陽が落ちた瞬間、仏塔は一瞬だけ色彩を取り戻し

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 やがて再びシルエットとなり暗闇に消えて行く。

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 そして感動する余り私は先を全く考えていなかった。そこからメインストリートは遥か彼方。そこまでは街灯一つ無いダートの道。後少し客はいるからと思っているうちに自転車は私独りになっていた。