バガンに陽が落ちる

世界遺産と日常生活について?此処に良い例がある。ドイツ、ドレスデン近郊のエルベ渓谷だ。世界遺産に登録された街は観光客で潤い活気づいていた。しかし人口増加に伴い渓谷を渡る為には慢性的な渋滞が起こり住民を苦しめていた。

 しかし新しい橋を作ると景観破壊に繋がり世界遺産は抹消されてしまう。抹消されればドイツ政府からの予算が減り街の財政を苦しくしてしまう。街は市民揃って投票して敢えて世界遺産を返上する事を覚悟した。

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(タピニュー寺院)
 世界遺産は委員会と言うレッテルを持った人間達のお墨付きでしかないのだから、私はそのドイツ国民の覚悟を祝福したい。日本の某寺院は世界遺産にはなったものの、そればっかりに歴史的行事の胡麻炊きが火を使うと言う理由で出来なくなり、新しく作った新館で行われているそうだが、それこそ本末転倒と言うべきでは無いのか?

 然しながら世界遺産委員会は普通一旦認定を延期すると改善されるまで突き放すのが恒例だが、此処バガンに限っては「早急に状況を改善して一日も早く再申請する様に」と申請の催促迄しているのである。即ち委員会がどうしても世界遺産に認定したくて仕方ない物件でもあるのだ。

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 その後自転車は快調に走りオールド・バガンを目指す。途中現れるガイドブックにも乗らない仏塔に立ち寄りながら。途中で大きい遺跡、ティーローミンロー・寺院に寄る。こうした遺跡には屋店が建ち並ぶ。観光客も多いが、仏像前では多くのミャンマー人が礼拝している。

 子供が寄ってきて「こっちお出でよ!見晴らし良いよ!」って言う。ネットで数々の旅行記に登場していたあの子だ。チップを払おうとすると「いらない!変わりに私の店を見て!」と言う。全く同じ展開だった。だけど私は買わなかった。それだけ展開は違ったけど、ネットの作者がまんまと彼女の手の内に乗せられてしまったのは良く解った。それ程愛嬌のある子供なのだ。その界隈では大人顔負けのテクニックの持ち主だった。

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 あっとあんまり時間を割いていられない。バガンと言えば夕陽。有名なシェーサンドー・パヤーに向かわなくては!ちょっと早いがあそこは超混み合うそうだ。早めに行って席を確保しなくては!

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 パヤーに着くと最早最上段は埋まりかけていた。急な階段を前の人を煽る様に荒い息を吐きつつ駆け登る。ピラミッド状だから上に行けば行くほど狭くなる。何とか席をゲット。狭い遺跡に之だけ人が集中しては遺跡保護の面からしても観光客保護の面からしても対策が必要だ。近年そんれらの為に登れなくなった遺跡が多くなったとは言う。だが余計その分高さ的にも立地的にも条件が揃うこの仏塔に観光客が集中してしまうのも道理だ。

 今なら押し合いへし合いで間に合うが世界遺産になり大型観光バスが列を成して押しかけたら・・・此処はアンコールワットやボロブドゥール程広くは無い。そんな心配を他所に陽が落ち始める頃には狭い通路は三列の人で埋まり、陽が落ち切る迄は身動きが取れない体勢になってしまった。

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 陽が墜ちる。一日が終る。これ以上どう言う言葉で表わそうか?