アマラプラの落日

 ザガインはバガン王朝が滅びた後に勢力を増したシャン族が此処に王朝を建てた後、何度か王朝が代わっている。今どの王朝の史跡も残ってはいないが、歴代彼等が奉ってきた仏塔が山を覆い、マンダレーと同じくザガイン・ヒルと言う大きな聖域を作っている。

 頂上まで登るとそこからは遠く霞んでマンダレーヒルまで見渡せる。眼下には横たわるエラワディー川、そこに架かる先程渡ったザガイン鉄橋、そして数え切れない程の黄金の仏塔。この絶景を眺めていると色々な事が思い浮かぶ。この黄金の仏塔一つ一つが人類の平和への渇望の筈なのに、人々は金箔を喜捨し自らの欲望を人々の平和へと浄化させてきたと言うのに、世界を巻き込んだ戦争はこの地を無残な血で染めた。

 再びミャンマーは経済競争と言う世界の欲の塊の中心として注目の的となっている。どうか此処が平穏であれます様に!私は祈りを捧げこの地を後にした。?

イメージ 1



 運チャンはそんなウエットな私の思いを吹き飛ばす様に快適に飛ばす。慣れてきた私は片手で手摺りを持ち片手でシャッターを切る。しかしミャンマーの舗装状態も運転マナーも劣悪だから、飛び跳ねたり急ブレーキも当たり前だから振り落とされない様に気をつけなければならない。

 運チャンが飛ばす理由はもう一つ。私をアマラプラのもう一つ残した見所ウー・ベイン橋に連れていく為だ。そこは夕陽の名所らしい。私も色々注文したし、運チャンもサービス満点な男で色々訳解らない寺院まで紹介してくれるからすっかり時間が押してしまった。

 ウー・ベイン橋はこの街が王都になった時の市長で、彼が人民の為にこの橋を作ったから彼の名がつけられた。200年前に建造された全長1.3キロに及ぶ長い橋だ。しかし今は観光のピークシーズン。橋には壊れるんじゃ無いか?と思う人だかり。この橋は昔の橋だから所々下が見える木の板で出来た橋だし、手摺りさえ殆ど無い。ちょっと、いやとっても恐い橋でもある。

イメージ 2




 しかしそんな恐怖心も陽が落ちてくると全て忘れる。幻想的な瞬間。下には夕陽を眺める為に漕ぎ出したボートも数多い。今日も感動的な夕陽が見れた。素晴らしいな、ミャンマー

イメージ 3



イメージ 4



イメージ 5



 旅が終り後はホテルに戻るだけだと言うのに運チャンは寄り道を続けてくれた。きっと何かあるなとは思っていたが「ホテルのすぐ横に安くて美味しいレストランがあるんだ!一人1000チャットなんだよ!」と彼は言う。その点私も十分合点はしてる。1000チャットは日本円で百円。今日一日十二分にも働いてくれて、乗ってるこっちもヘトヘトのペコペコなのだから、それくらい驕ってあげなきゃ男が廃る。

 この値段でこれだけの料理はミャンマーの旅全体でも見つける事は出来なかった。やはり美味しい店は運転手に聞くに限るは世界共通なのかもしれない。おかげで一人寂しくの筈が楽しい夕食の時を過ごさせて貰った。良い男と巡り会えた。