バイクタクシーに跨がって

 朝、私の用意が済むと早速バイクタクシーの運チャンはやって来た。私の経験上こうした個人経営の運チャンは決して約束の時間を違え無い。バンコクのバスのアジアンタイムなのと大違いなのだ。不思議なものだ。

?街で捕まえるのと違く予約していたからだろう。きっちりヘルメットも用意してくれた。私は自転車を含め二輪になれていないし、もしもの事を考えてフロントを通した方が安全だと考えたのだ。

 最初に向かう都市はアマラプラと言って二度に渡り王都となった場所で、今あるマンダレーの王宮は此処から移築されたそうだ。その為現在は王都として残されたものは無いが、世界で一番長い木造の橋があるのと、大きな僧院があり午前中に僧侶の食事風景を公開している事から多くの観光客が訪れると言う。

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 バイクタクシーは街中のちょっとした移動に使うものと思っていたし、そうした体験は過去に無いから最初は都市間移動にはビビっていた。バイクタクシーと言ってもトゥクトゥク等と違って客の乗る特別な配慮の無い単なる原付きの2ケツだ。私は原付きは疎か自転車にも疎い。なんとか腰掛けの後ろの手摺りにしがみつきバイクタクシーでの旅が始まった。

 アマラプラでの僧院での僧侶の食事に合わせる為、マンダレーでも有名な寺院に連れて行って貰った。ラッキーである。これで余り見れなかったマンダレーの見所を補完出来る。寺院の名はマハムニ寺院、マンダレーでも一番重要な寺院だそうだ。中には金色に輝く小乗仏教独特のお堂の中に、これまた金色のマハムニ仏像が鎮座している。

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 そこにミャンマーの人々は金箔を買い、自分の気になる場所に当たる仏像の場所に金箔を貼っていく。つまり目が気になるなら仏像の目に金箔を貼る。こうして仏像の金色は日に日に増していくのだが、最早原形が・・・なんて勢いだ。

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 仏像の背後は鏡で装飾されこちらもキラキラ。トドメはLEDで電飾の後光が光っている。ワビサビを大切にする日本の美意識と相反する美意識だが、ミャンマーではこれが当たり前。どこの寺院もそうなのである。

 国によって価値観は変わる。何が良くて何が悪いなんて無いのだ。そんな事も解らない子供の様な輩が昨今多い、特に政治家と呼ばれる連中に。

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 この寺院にとても興味深いものを見つけた。アンコールワットにあったと言う象の置物だ。東南アジアで大きな勢力を誇ったアンコール王朝、しかし弱体化したところを現在のタイに興ったアユタヤ王朝に攻め滅ぼされる。

 過去に繁栄した王朝の栄華に憧れ、その王朝を滅ぼした後、その王朝の栄華をそのまま受け継ぐ事は之まで歴史的に見ても世界の何処でも見受けられる行為だ。アユタヤ王朝もアンコールワットから多くの財宝を略取した。今でもアユタヤの代わりに建国された現在のバンコクの王宮にはアンコールワットのレプリカが飾られている。

 しかしそれも束の間、アユタヤ王朝はビルマ王朝に攻め滅ぼされ遺跡と化してしまう。そしてビルマがアユタヤを攻め落とした時、彼等が保有していたアンコールワットの象が遠く此処まで運ばれてきたと言う事だ。人の栄華、人の欲、人の争い、全てを見てきただろうこの象は長い旅の末何を思うのだろう?傍らでは今日も人々が金箔を仏像に貼付けている。ミャンマーの人々が貧しいのは信仰心故多くを御布施で使ってしまうからとも言われる。

 さて、時間も近づいてきた。アマラプラに向かおう。