モーリタニア旅行記5シンゲッティ経由してウアダンまで

 ザルガ山から昇る朝陽を拝み、ザルガ山に立ち寄ってシンゲッティへと向かった。シンゲッティは私にとって、当初この旅の目的の最大でもある。

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 櫟漠やら土漠の途方も無く広大な大地を抜けると砂丘に囲まれた平坦な砂の道を4WDは走る。これはアラビア語でワジと呼ばれる渇れ川だ。以前、若しくは今日でも大雨が降れば此処が川となるのだが、通常は乾燥し過ぎていて干上がっている。アラビア半島からサハラまで、こうした乾燥した地域にはワジが多い。

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 そんなワジを抜けるとシンゲッティに到着した。このツアーの名称は「砂に埋もれゆく隊商都市を訪ねて」と言うものだが、正しくシンゲッティはサハラ砂漠に埋もれゆく街でもある。

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 いや埋もれては移動を続けてきた街でもあり、今あるシンゲッティよりちょっと離れた砂丘の上に遥か嘗てのシンゲッティのモスクのミナレットが再現されている。

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 そして現在のシンゲッティもまたサハラ砂漠に飲み込まれてしまう寸前なのである。しかしシンゲッティはモロッコからトンブクトゥへと続く交易路の中央に位置し、交易は勿論の事、イスラームの宗教、学問の中心として栄えてきた。此処周辺に暮らす敬虔なモスリムにとってマッカ(メッカ)へ巡礼する出発点となった他、其処へは行けない人々も、シンゲッティを複数回巡礼する事により、マッカへ巡礼する事と同じとなる、イスラーム第7の巡礼地として君臨した。

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 大航海時代が始まり、サハラ交易が衰えると共にシンゲッティの栄光の日々も去り、押し寄せるサハラ砂漠に飲み込まれる寸前ではあるものの、その栄光は現在のモーリタニア人にとっても誇りである事は変わり無く、現在進行中の油田開発の名称もシンゲッティ油田と名付けられている。

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 シンゲッティには幾つかの図書館が残されており、トンブクトゥにもあった様にイスラームの歴史的書籍が残されている。イスラームは中世のキリスト教とは違い、宗教と科学が共存していたので、ガリレオ・ガリレイが地動説を唱えたばかりに宗教裁判で処刑される遥か以前から地動説を発見、天文学が発達していた。

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(図書館の館長さん)
 こうした貴重な書籍が、原始的に保管されている事を批判する人も多いが、私はこうした貴重な遺産はその故郷にあって、初めて意味を為すと思っている。例えば絵画でも作者はその絵画が何処に飾られるかを想定して描く事が多い。例えば教会ならその協会の飾られる位置の光線、飾られる位置の建築の構造を巧みに利用したものも数多い。

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 それらを絵画だけ抜き取って美術館に置いたとしても、その絵が産み出すポテンシャルを十分に発揮出来るとは思えない。また、先進国が遺産の保護の為、その遺産を現地から持ち出すと言うのも欺瞞に過ぎない。嘗てシルクロードに描かれた壁画の安全を守ると称してヨーロッパに持ち出された壁画の数々は、世界大戦により焼失してしまった。どうせ失われてしまうのなら、いっそ故郷で眠らせてあげた方がその遺産にとっても望ましい事だ。

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 そんな図書館の屋上からシンゲッティのモスクを眺めた。決して荘厳なモスクでは無い。いや世界に並び建つモスクの中では質素な部類に入るだろう。しかし此処は嘗て第七の巡礼地として栄えたモスク。モーリタニア様式と呼ばれ、此処周辺でしか見られないミナレットを持つ。そのミナレットの四つ角には嘗て駝鳥の卵が生命のシンボルとして飾られていたと言う。

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 暫し砂に埋もれたシンゲッティの旧市街を散策した。ちょっとだけの時間ではあったが、独りでシンゲッティの街を散策させて頂いた。本来は一泊でもして存分にシンゲッティを堪能したいところだが、そこはツアーの宿命だ。

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 途中シンゲッティ砂漠を越えた場所でランチを取った。辺りをキョロキョロしていると全身メタリックシルバーに輝く蟻を発見した。暑すぎる砂漠で熱を反射させる為だろうか?

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 シンゲッティを後にした我々が次に向かうのはウワダン。此処もまたサハラ砂漠を縦断する交易の街として栄えた街だ。そこまでの道程がまた凄かった。何処までも眺められる360度の大平原。そして風紋。こんな世界観滅多に見れない。こんな場所を走れるのはやはり4WDならでは、ツアーならではの事である。

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 そんな途方も無いを通り越し、ウワダンが見えてきた。旧市街は明日散策するので、今日は新市街に建つガイドさん宅を訪問し、オーベルジュ(ホテル)へと向かった。

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 ツアーの紹介ではかなり簡易なものと書かれていたが、立派なホテルでビックリした。やっぱりバックパッカーしている私と一般の旅行者では感覚に開きがあるだろうから、こう書かなくてはならないのだろうが、現地の状況を鑑みれば十分すぎる内容である。(シンゲッティにはこれ程のホテルが無いからウワダンまで強行軍だったのだろう。)

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 二日テント泊だったので暖かいシャワーが出るのも嬉しい。外に出ればまた印象的なアフリカの木が夕焼け空を飾ってくれた。

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