シルクロードを西へ!トルコ編イスタンブール4

  イスタンブールの旧市街の歴史地区からトラムが走る目抜通りを西に進み、天葢に覆われた巨大なグランド・バザールに向かった。オスマン帝国が築いた歴史あるバザールで、嘗てはシルクロードから届いた商品も此処で売買されたのであろうが、今となっては観光客向け主体のバザール。それ故に地元の人でさえ恐れる強気の言い値で悪名高いバザールでもある。
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 だから他の場所でも買えるものなら他で入手した方が利口だ。だが此処は商品も豊富で店も無数にあり此処でしか手に入らないものもある。ボッタクリと人は言うが、そもそもイスラームに定価の概念は無い。強気で有名な此処だから、言い値は相場の十倍なんて当たり前、此方も常識をかなぐり捨てて相手を挑発する様な値段を提示する事から勝負が始まる。
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 勝負はバザールの休日前の閉店前が良い。相手の仕事を終わらせ早く帰りたい、そんな心理につけこむのだ。勝負は焦ってはいけない。長引けば椅子が出て、チャイを振る舞われながらじっくり商談するのがイスラーム風。やがて話は脱線しとりとめの無い話になる。
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 ラジカセでトルコの音楽を聴き、誘われるままに彼等と踊った。回りの商店主が携帯でそんな様子を動画に納めている。躍り終わると何故かそれまで強硬だった店主の姿勢が途端崩れた。

「あと一押し!」

 私の言葉に店主は急に電卓を叩き出す。彼等がボスと連絡したり、電卓を使い出した時は、値段がシビアになった時と考えて良い。手の打ち所だ。こうして私は望みのチェスを手に入れた。チェスの駒がオスマントルコVSビザンティン帝国の構成になっている、此処ならではのチェスだった。
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 更に歩みを西に進める。するとローマ時代から残る水道橋が見えてくる。嘗てのローマ帝国の遺跡で幾つもも水道橋を見てきたが、その度に太古のローマ人の知恵に感嘆させられる。
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 更に西に歩みを進めれば、住宅街の中にひっそりと明らかに東方正教会の建築様式の建物を発見した。教会には似つかわしくないミナレットが添えられている。此処もアヤ・ソフィア同様オスマン帝国時代にモスクに改装されたカーリエ教会だ。
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 オスマン帝国は異文化に比較的寛容な帝国だったので破壊する事無く改装と言う形で現代に形が残された。勿論キリスト教のイコンは塗りつぶされてしまったが、塗りつぶした結果、それを剥がす事で貴重なビザンティン時代のイコンが今に残った。此処もまた、歴史的重要性を鑑みて、モスクでは無く博物館と言う形で公開されている。
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 カーリエ博物館を出るとすぐ脇に巨大な城壁に突き当たる。やっと城壁に辿り着いた。テオドシウスの城壁だ。私は旧市街のある街は必ず城壁から城壁まで歩き倒す事に決めている。その街の規模を直に感じ取りたいからだ。しかしこれだけの規模の旧市街を私は今まで歩いた事が無い。それだけイスタンブールは規模の大きい街だと言う事を実感した。