シルクロードを西へ!コーカサス編ジョージア・シャティリ5

 ヘリコプターは飛び立った。シャティリに訪れていた観光客は欧州系のグループのハイカーさんが多かった事もあり、単独で訪れていた私や韓国人、ポーランドの彼は地元民と一緒に第一便での搬送となった。乗客全てに安堵の笑みが溢れる。ヘリコプターはそんな感傷を振り払うかの様に急激に高度を上げていく。

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 マルシュルートカがあれほど苦労して越えた峠をヘリコプターは一気に越えていく。機内の隅で小さな窓からその光景を眺める私の為に、シャティリの老人が私に代わって写真を写してくれた。
 
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 ヘリコプターはあっという間に峠を越した先のバリサホ村に到着した。パイロットの謝意を述べ機外に出る。ヘリコプターは次の救出者を搬送する為休む間も無く折り返し飛び立つ。
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 オタオタしていた旅人の帽子がヘリコプターの風圧で飛ばされていく。カメラを構えた私も後ろに吹っ飛ばされる。それでも大手を降ってありがとう!とヘリコプターを見送った。
 
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 一旦地上に取り残された私達は地元の人々が歩き出した方角へ当ても無く付いていく。やがて往きに休憩を取った売店が見えてきた。店員さんが常駐する売店、そんな当たり前な風景にも思わず感動してしまう。その売店の前がバス停で、我々をピックアップすべくマルシュルートカが待機してくれていた。ただ第一便は地元民が殆どだったので、第二便で運ばれてきた旅人を積めるだけ積んでマルシュルートカは出発した。
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 これで後は乗っているだけでトビリシまで連れていって貰える、乗客達にホッとした安堵の表情が浮かぶ。しかしバリサホ村を抜ける途中の短いダートの部分の川岸も最早川が侵食し始めていた。あと一雨降ればこの村も危ないかもしれない。
 
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 とは言え積もる想いを話ながらマルシュルートカはトビリシを目指す。隣の韓国人の若者とも会話が進む。若い彼には日本で一時期大人気を博したぺ・ヨンジュン氏の人気の意味が解らない様だ。そんな彼はジブリの大ファン。中でも「耳を澄ませば」が大好きらしい。私がその作品の舞台となった町に近い場所に住んでいる事もあって、大いに話が盛り上がった。やがてどちらともなくその映画の主題歌を口ずさむ。余りにもこのシュチュエーションに当てはまっていて涙が溢れてしまう。
 
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Country roads,
Take me home
to the place I belong
West Virginia,mountain mama
Take me home country road
 
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この道 ずっと行けば
トビリシに続いてる
そんな気がする カントリーロード
 
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いつの間にか車内には手拍子が。
 
 そんなこんなで漸く我々一行はトビリシに無事帰還が叶った。しかし此処でホッとしてはいられない。この水害で私は貴重な二日間を失ってしまった。この二日間を取り戻さなければならない。皆と別れ今夜発のアルメニアエレバン行きの寝台列車のチケットを入手しにトビリシ駅へと急いだ。
 
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 時に旅の神様は厳しく優しいと思う。私の旅はいつだってそうだ。ギリギリのところでなんとかなる。旅の神様は私を絶望させない。でも流暢に旅させてもくれない。いつだって頑張れば、ギリギリ何とかなるって場面を私に与えてくれる。私はそれを断る理由は無い。やれるところまでやろう。この二日間を取り戻して見せる!
 
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 トビリシ駅にて無事チケットを入手した私は、列車の出発まで旧市街の思いっきりツーリスティックなレストランで夕食を摂った。わざわざ旧市街まで出る事も無かったし、料金が嵩むツーリスティックなレストランはいつもなら私は敬遠するのだが、今は思いっきり旅人がいる、そんな雰囲気に浸りたかった。いつもならウザくも感じる人混みに私は安堵を感じていた。何故なら人も疎らな寒村で三日も幽閉されていたのだから。
 
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 レストランでワインの発祥地とされるジョージアのワインを傾けながら感傷的に夕食を摂っていると私の肩をポンと叩く者がいる。見上げればシャティリ村から私と同様救出されたメンバーだった。
 
「良い旅を!」
 
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 お互い親指を立てて互いの旅の幸運を祈った。
 
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 さて、アルメニアを目指そう!失った二日間取り戻せるかどうかは、私の腕の見せ所だ。