シルクロードを西へ!コーカサス編ジョージア・シャティリへ2

 チャチャで気分は上々になり、マルシュルートカはワインディングロードをひたすら下っていく。とあるカーブを曲がった瞬間髭生やしたオッサンが急坂を駆け上がってきた。まさか山賊!
 
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「出、出たあ!」
 
 思わず叫びそうになったが、良く考えれば今時棒切れ一本しか持たない山賊なんている訳も無し。彼の走って来た坂の下には大柄なジョージア犬の牧羊犬と羊の群。彼は羊飼いだったのだ。山賊風の羊飼いのオジサンはマルシュルートカの運転手さんと仲良さそうに話している。
 
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「今度トビリシに行ったら、週刊PLAYBOY一冊買って来てくれんかな?」
 
 なぁんて頼んでいるのかもしれない。下り坂は漸く下を流れる小川に迫り、やがて小川に並走してマルシュルートカは走る。それは峠道の終焉を意味しホッと一息する。やがて民家がパラパラ見えた。シャティリに到着したのだ。

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 シャティリはコーカサス山脈の麓に位置する文字通りの僻村で、山の北側はチェチェン共和国と言う立地にある。その昔、イスラ―ムを信仰するチェチェンとの勢力争いからの防御の為、村は要塞化した塔状の住宅に暮らした。それを訪れに観光客はこの僻地まで訪れる。

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 現在では村人は要塞とは別の場所に住居を構えるが、二軒程が要塞をゲストハウスとして営業している。シャティリは現在では定住村では無く、住民の基盤となる産業の牧畜と副業である観光業の為、夏のシーズンだけこの地で暮らす。

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 マルシュルートカは要塞のゲストハウス前まで我々を運んでくれたが、まさかまさかの満室。秘境と呼ばれるシャティリだが、欧州のハイカーには人気のスポットでもあり、東のオマロや西のカズベキから数日かけてトレッキングし、この村からマルシュルートカでトビリシに戻るハイカーが多いのだ

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(シャティリの新村)
 私は望みのゲストハウスが満室だった事より、満室になる程ハイカーがいる事に驚異を感じた。何故なら彼等は明日一斉にマルシュルートカに乗ろうとするだろう。さすれば小さなマルシュルートカはあっという間に満車になってしまう。私は運転手さんに明日の分の運賃を前払いして、絶対乗るから忘れないでね!と念を押した。

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(川の向こうの低い石積の塔が今夜の寝床)
 結局、メインの要塞群から小川を挟んだ先に建つ小さな要塞のゲストハウスに運良く空き部屋があり、ちょっと高めの料金設定だったが、此処は奮発して泊まる事に決めた。

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 ゲストハウスのロビーには昔使われていた農具や民族衣装が飾られ、雰囲気を盛り上げてくれた。しかし陳列されたものに目を奪われてばかりはいられない。部屋に荷物を残すと、いざ要塞へと私は駆け出した。