シルクロードを西へ!コーカサス編ジョージア・メスティア

 彼女が伝えたかったメスティアの素晴らしいところは具体的には解らない。だけど自分なりに調べ訪れてみる事にする。メスティアにもウシュグリ同様復讐の塔が林立している。

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 しかし塔のある風景ならウシュグリで存分に見てきた。だからメスティアに幾つも設けられているトレッキングコースの中から十字架峠コースに挑戦する事にした。

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 宿に荷物を下ろし十字架峠の場所を尋ねると上に行けばあると言う。ウシュグリのタマラ女王の塔の時も同様だったが、ジョージア人の道案内は超適当である。まぁジョージア語で詳しく説明されても私は解読できないし、お互い詳しく英語で説明、理解する英語力も無いのだから致し方無い。

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 登山道には薄く平たい岩がゴロゴロと敷き詰められている。此処周辺はこうした剥がれやすい岩が豊富にあるのだろう。復讐の塔や民家も、この薄く剥がれた岩を丁寧に積み上げて築かれている。

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 そんな岩が積み重なった登山道を登っていく。途中登山道野分きの草むらがガサゴソと動く。

「出、出たぁ!」

 と飛び退くと、それは数頭の牛さんだった。

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 再び登山を開始するとなんと牛さん達もついてくる。

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ちょっと先行して一休みしていると、牛さん達に追い付かれ再び登山を開始する。

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 牛さんは私に追い付くと「もぉーっ!」と私を促す。何故かこうして暫し牛さん達と登山する。

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 途中ショートカットコースを選び、牛さん達とはそこでお別れ。

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 地図アプリmaps meは海外で非常に便利なアプリだ。一度Wi-Fiが使える場所で地図をダウンロードしておけば、オフラインの状態で自分の位置を確認しながら地図を見る事が出きる。

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 人に道を尋ねられない、Wi-Fiを使えない状況下で非常に役に立つ。こんな小さな山道までも使えるとは思ってもいなかった。

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 しかし地図は二次元、高低差までは表せない。ショートカットコースの急坂を登った私は前日のタマラ女王の山道と立て続けの登山に体力を消耗し、最早グロッキー。しかし森林限界を超えたのか?ウシュグリ同様草地に咲き誇る小さな花が、そんな私を応援してくれる。

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 それにしてもジョージアの道事情は、道をたずねた時のジョージア人の応答と同様いい加減そのものだ。道案内板も適当で、肝心な場所に無い。道の整備は杜撰で、道を作ったと言うより人が登った道がそのまま道になったと言う感触。迷い易く、滑り易いから非常に疲れる。勿論それは登山道だけでは無く、ウシュグリへ行く道の様に車道でも同様だ。それが数日後私を深刻な問題に突き落とす事となる事はつゆにも思わず私は登山を続行する。

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苦闘の末、漸く目指す十字架が見えてきた。

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最後の力を振り絞って十字架まで辿り着いた。

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驚いた。360度の大パノラマが広がっていた。眼下にはメスティアの街が、

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復讐の塔が、まるで玩具の様に小さく広がっている。

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そして360度、雪山が街を取り囲んでいる。

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そして振り返ればコーカサス山脈ツインピークス、ウシュバ山が堂々と聳えていた。

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 彼女が伝えんとしていたメスティアの素晴らしさ、その片鱗かもしれないが、十分過ぎる程体験する事が出来た。

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360度の大パノラマに抱かれて十分体を休めてから峠を下った。

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 秘境を目指すバックパッカー達は口を揃えてメスティアは観光地化され過ぎていると言う。しかし私はバックパッカーが良く口にするこの様な言葉は好きではない。何故なら私達貴方達旅人がこぞってやってきたから観光地化されたのだ。我々も此処を観光地化している一分子に過ぎないのだから。嫌なら最初から来なければ良い。観光地なら観光地として楽しめば良いのだ。

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 街にはそれぞれ役割と言うものがある。もし、この街が無く、旅人が全てダイレクトにウシュグリを目指したら、あの村はパンクしてしまうだろう。環境破壊も進むに違いない。この街がポンプの役割と防波堤の役割を果たしていると感じる。

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 それに幾ら秘境好きとは言え、現代人にとって其処でずっと滞在するのはストレスもある。そう言う意味ではメスティアは非常にバランスが良い快適な街であり、メスティアの滞在があってこそ旅人達の快適なウシュグリ訪問が成り立っていると言っても過言ではない。

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 勿論彼女が力説した様にこの街単独でも十分魅力的な街だと思う。復讐の塔も建ち、現代的な生活も送れる。それでいて長閑さは保証されている。そして何より十字架峠を含む多様なトレッキングコースの存在だ。

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 其処からはコーカサス山脈とスバネティ山脈に囲まれた360度のパノラマを楽しむ事が出来る。もっと足を伸ばせば美しい湖もあるそうだ。冬になればスキーも楽しめる。

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メスティアをウシュグリへ行く為の通過点にしてしまうのは勿体ない。

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 繰り返しになるが街にはそれぞれ性格がある。ウシュグリと言えば秘境と言う旅人の一方的な視線がメスティアの過小評価に繋がっている。メスティアは此処スバネティ地方のセンターとして、自然散策の拠点として捉えれば、素晴らしい魅力に富んだ街だと言える。

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 彼女のひとことをちゃんと聞いておいて良かったなと思える街だった。