シルクロードを西へ!コーカサス編アゼルバイジャン6

  寝台列車に乗る為、駅前の売店で飲み水とパンを買い込み、同じ様な客車がホームに幾つか止まっていたので、駅員に尋ね、チケットと照らし合わせながら自分の客車を探し乗り込んだ。すると中から何を言っているのか解らないが凄まじい剣幕で巨漢のオバチャン車掌が飛び出してきた。

「あんた!誰が未だ乗って良いと言ったのョ!」

 多分私の訳は間違ってはいまい。

「で、出たぁ!」

 と叫びながら客車から飛び降りようとすると巨漢オバチャンは

「待ちなさいよ!」

 と私を引き留めると、ビビる私を押し退けて、客車のタラップを下ろしてくれた。恐縮しながら列車を降りる私。そう元共産圏の寝台列車には、大抵一両に一人車掌が乗り込んでいる。大抵巨漢だ。車両に乗ってるだけの時間が長いからそうなってしまうのだろうか?そして態度もデカイが実は世話好きだったりするのも共通している。ここら辺は体も態度もデカイだけのアメリカのC.A.よりずっと親しみやすい。(アメリカの航空会社のC.A.なんて邪魔なだけだから、いない方がマシだ。)

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 やがてオバチャンがけたたましく乗客を集め、一人一人の切符を確認しながら列車に乗せていく。列車が動き出せばオバチャンはボヨーン、ボヨーンと凄まじい勢いでシーツ、枕カバー、タオル等が入ったセットを客室に放り投げる。さて夜汽車の旅は始まった。

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(何故か新幹線の図柄のシーツのセット)
 たった二日間だったけどアゼルバイジャンを旅した。首都バクーは想像以上の洗練された都市だった。その背景は間違いなく石油にある。アゼルバイジャンに富と繁栄をもたらせた石油だが、その金の成る木を巡って世界の禿鷹達も手を子招いている訳では無い。

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 旧宗主国のロシアは自分の陣営にアゼルバイジャンを取り込もうと必死だ。しかしそれを阻もうと欧米はワザとロシアを経由しないルートでアゼルバイジャンから石油のパイプラインを引いた。石油の権益を狙っているのはロシアと欧米だけではない。シルクロード構想と唱って中国は西方に触手を動かし始めた。その先にアゼルバイジャンの持つ油田があるのは間違いない。こうしたエネルギーの利権を巡る争いにアゼルバイジャンはどう舵を切っていくのか?

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 そしてその石油もいつかは途絶える。その時アゼルバイジャンはどう動くのか?アゼルバイジャンを含むコーカサスは未だ日本では未知なる旅先だが、今回旅して潜在する観光資源の豊富さに驚いた。アゼルバイジャンの首都バクーはコーカサス地方を旅する為のゲートウェイの都市と立派に機能していく都市に成長していくのではないか?未来が楽しみな国だと私は感じた。そんな事を考えつつ私は深い眠りに落ちていった。

「おい起きろ!パスポートを出せ!」

 それほど早い時間では無かったが、到着早々猛暑の中旅を続けたせいか国境警備員に叩き起こされてやっと私は目を覚ました。簡単な出国審査が終わったら約一時間後に今度はジョージア側の入国審査を受ける。これも簡単な荷物チェックだけで終わり、後はトビリシ到着を待つのみだ。

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 やがて巨漢オバチャンがシーツセットを回収にやって来る。

「あんた!タオル足りないわよ!何処やったのよ!」

流石抜け目無い。忘れていたふりして、猫ババしようとしていたタオルをオバチャンに戻す。オバチャンは再び大声を張り上げながら車内を巡る。さて、ジョージアとはいったいどんな国なのか?