シルクロードを西へ!ウズベキスタン編ヒヴァ7

 世界遺産で繰り広げられた小さな天使の撮影会も終わり、私は民族舞踏が行われるアラクリ・ハーン・マドラサに向かった。舞踏は先ずオジサン、オバサン、若者に子供と言う編成の舞踏から始まった。子供が道化役となって良い味を出している。しかしこれは前座に違いない。舞踏と言えば美女、美女が付き物だからだ。

イメージ 5


 すると舞台の端でメインアクトと思われる踊り子達がスタンバイを始めた。その中で一人だけ衣装の違う女の子がいる。多分彼女がヒロイン役だ。彼女は何処か心配そうに回転の練習をしている。初舞台なのだろうか?そんな表情を見てしまうと応援したい気持ちになる。

イメージ 6


 やがて彼女達の出番となった。舞台に登る彼女、ファインダーを覗けば、ファインダー越しに彼女と目が合ってしまった。思わずピントがズレた。不覚。

イメージ 7


 舞踏が始まると彼女が緊張していた訳が解った。今日は何かの撮影なのだろう。ビデオカメラを担いだカメラマンが彼女達を撮影し監督が檄を飛ばしている。何度かのカットの後、漸く本番がスタートした。

イメージ 8


 一人の男が弦楽器を掻き鳴らしながらイスラーム独特のコブシで歌い上げる。彼女達は舞う。躍りは王宮芸能を感じさせる堂々とした舞踏だった。

イメージ 9


 舞踏が終わり彼女達が舞台裏へと戻っていく。その一行が私のテーブルの脇を通った時再び、今度は直に彼女と目が合った。大舞台を終えてちょっとドヤ顔の笑顔を振り撒いて彼女は舞台裏へと消えていった。

イメージ 10


 舞踏が終わって夜の8時、漸く遅いヒヴァの夕暮れが近づいてくる。そろそろ土産屋も店仕舞い。初日に本を買った土産屋の女の子が手を振っている。隣の帽子を買った店の女の子も大きく手を振っている。彼女達は知っているのだ。ヒヴァのイチャン・カラの入場券は二日間有効の券、忙しいツアーなら半日、個人旅行者も有効期限の二日を過ぎればこの街を去る。昨日私と出逢ったのだから、今夜が私とお別れになる事を。私も彼女達に大きく手を振ってお別れをする。

イメージ 4


 イチャン・カラに沈む夕陽がとても切なかった。二日間、猛暑のヒヴァを歩いたのだから、最後の夜は熟睡出来るかと思いきや、何故か目覚ましもかけずに早朝私は起きてしまった。そして何者かに導かれるかの様にイチャン・カラへ入城する。気づけば私は昨日私が登った城壁の上にいた。

イメージ 3


 未だ薄暗い城壁の上で静まり返ったヒヴァの街を見つめているとやがて朝陽が昇ってくるではないか。今思い返しても不思議に思う。私はこの時、方角等全く意識していなかった。朝起きたのも偶然だし、この場所に来るなんて、計画すらしていなかった。

イメージ 2


 昨日この城壁を登った時に、この城壁の近くにあったイスラームのお墓に拝んでから登った。その聖霊が私を此処まで導いてくれたのかもしれない。

イメージ 1


 バフラヴァン・マフムド廟のドームが、イスラーム・ホジャとジュマ・モスクのミナレットが、影絵の様に浮かび上がる。この街に暮らす人々の日常の景色が、後数時間も経たない内に、私にとっては非日常の景色となる。この風景を忘れはしまい。この景色を胸に焼き付けて、私は城壁を降りた。