ブータン旅行記13 最後の夜

  キチュ・ラカンの見学を終え、実質的な今回の旅の観光は終わった。ホテルに戻る。日が暮れてゆく。目の前にはダショー西岡が教え、そして繋いだ棚田が永遠と拡がっている。平和な光景だ。今宵は偶然にも満月、それも私の部屋のテラスの目の前から昇ってきた。暫し見とれる。

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(ホテル・デワチェン・リゾート)

 あの現国王来日から、ブータンは世界一幸せな国と言うキャッチフレーズが一人歩きしだした。それはブータンと言う小さな国を広めた功績は大きいが、世の中人が増えればアンチも増える。

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 しかし金が信仰対象の資本主義の我々が、貧しいこの国がどうして幸せなのか不思議に思う事は当然の事。この私だってそのうちの一人。だからこそ此処まで確かめに来た。

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そしてひとつの確信を掴めた。

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 どんなに大金持ちの家庭に生まれても、その両親が冷めきっている家庭に生まれたら、その子供は幸せとは感じないだろう。逆にどんなに貧しい家庭に生まれようが、両親が命を張って守って育ててくらたなら、その子供はどんなに貧しくとも幸せだって答えると思う。

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 そんなの誰だって解ってるって答えが聞こえてきそうだ。だけど、国だって同じだ。どんなに金が溢れようとそれ以外は無頓着で、弱い立場の国民がいようと見て見ぬふりの政治なんて、誰が信頼出来るだろう。

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 この国の王は違った。国が滅ぶかどうかって瀬戸際に、僅か16歳で全権を背負わされてもビクともするどころか、他の国の失敗例を良く学び、後進国であろうとも、アイデンティティーを高め、先進国の真逆を行く発想で注目を集め、厳しい難局を切り抜けてきた。

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 時に自分が陣頭を取って軍事作戦を率いて国難を救った。そして国政が起動に乗るのを見計らって、自ら冠を下ろし、政治を国民に譲った。

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 此処まで格好良い事されたら、国民はいくら貧しくともこの国に生まれて良かったと答えるしかないじゃないか。一方国王だって、犬が増え過ぎて困っても、犬を駆除してまで快適な暮らしを得る事を望まない。鶴が怪我したら可愛そうと電化を諦める。そんな心の美しい国民達を前にしたら、命懸けでも汚れ無き国民の心を金で汚してなるものか!ってなるじゃないか。

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 以前国民の幸福度ランキングを調べた時、トップ10は医療、教育無料の高い福祉の国で埋め尽くされた。その中でブータン一国が貧しい国だった。その秘密はなんだろう。それが私の疑問だった。でも此処で私はその答に辿り着けた。それは政治と国民の信頼関係だ。

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 ブータンの町を歩けば何処にでも王の写真が飾られている。殆ど現国王が多くなったけど、未だに四代目を掲げ続ける家庭も多い。ブータンの国民と国王は深い絆で結ばれていた。それはとても幸せな事だ。ブータンはやはり幸せの国だ。

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 ブータンの幸福度に対するアンチな意見は、いくらスローライフと言われても、今の日本じゃ真似できないよなって声が多かった。勿論その意見も解る。だけど今別の意味で日本はブータンの真似が出来ないよなって凹んでしまう。何故なら今の日本に四代目みたいな信頼が置ける政治家なんて一人もいないから。

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 でもね、こうも思うんだ。信頼ってどっちか片方が信じりゃ良いってもんじゃないだろ?って。民主主義なんだから尚更さ。

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 かの四代目だって、この国民がいなければきっとあの偉業は成し遂げられなかった。我が国もお互いに信頼出来る国作りが出来たのなら、きっと世界一の幸福な国になれるんじゃないかな?