モロッコ旅行記14

 大変お待たせ致しました。ブータンから帰国していました。幸せの国ブータンから戻ると日本はカルチャーショックで臥せっていました(笑)ではちょっと間が空いてしまいましたが、モロッコ旅行記の続きから始めたいと思います。

 カワナメシの強烈な悪臭と強烈な陽射しにやられて、カワナメシ工房を出て街を彷徨っている内に私は全く方向感覚を失ってしまった。

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 こうなると最早地図等全く無意味な存在になる。何故なら現在地すら解らないのだから。しかし地図を見て答え合わせをしながら歩く様な旅は最初の内だけで良い。旅の楽しさは此処から始まる。私は地球の歩き方をサイドポケットにしまうと気の向くまま、風に吹かれるまま迷宮の奥へと足を進める。

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 喧騒のスークを抜け静寂の住宅地へ。突き当たって後戻りし、往き来た道では悔しいから違った道を選び、またさっき見たばかりの風景に落胆し、また新しい道に挑む。

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 そんな事を繰り返していると親切な人や、チップ目当てのにわかガイドが声を掛けてくる。

「迷っているのか?何処へ行きたいんだ?」

「解らない…。」

「解らないとはどう言う意味だ?」

 解らない…。そう、本当に解らないのだ。私は只単に街歩きを楽しんでいるだけで目的地等無いのだから。それに迷宮を楽しむ者に種明かしは不要だ。

「ヒントは大切だが答は要らない。」

 これは旅に於いても人生に於いても私の重要な格言だ。

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 スークはまるでひっくり返された玩具箱。角を曲がる度に驚きがある。生きた鶏の足を掴んで買い物をするお母さん。ふと振り返れば解体された牛の頭と目が合って仰天。と突然人たがりのスークに大声が張り上がる。

「ちょっと道を開けてくれ!」

 驢馬や馬を引いた運送業、日本ならクロネコさんの様な方々だろう。人々が一斉に道を譲ってやり過ごす。

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 そんな縁日の様なスークを楽しんでいる内に陽も落ち始め、私のお腹も音を立て始める。

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 ふと路地裏に見つけた人だかりに目を奪われていると

「食べたいの?そんな所に突っ立って無いで、こっちいらっしゃいよ!」

 と再び現地のお姉さんに声を掛けられ手解きを受け、現地ファーストフードを頂いた。それでは足りず梯子をすれば、店員さんや常連さんと話が弾む。

「私はビンボー、彼もビンボー、貴方もビンボー、この食事もビンボー、ビンボープライス!」

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 何処の旅人が教えたか?日本語と英語が混じった不思議な会話に、訳を知っている人も、そうでない人も皆大爆笑。そんなこんなで食事を終え外に出る頃にはスークの店は殆ど店仕舞い。道往く人々も殆ど無くなる頃だった。

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 しかし私は相変わらず迷宮を彷徨い続ける。同じ風景を何度も拝み、もうこの街から抜け出す事が出来ないのではないか?内心慌て出したそんな折りだった。私は突然右上腕をムンズと掴まれた。

「エッ…??」