モロッコ旅行記2

 日本からドバイまで約10時間、ドバイからモロッコまで約9時間、久々のロングディスタンスの飛行機の旅だった。しかし休む間も無く鉄道駅へ、想像に反して電光掲示板も有する近代的なホームに、此処はヨーロッパか?と思うお洒落な列車が到着した。思えばモロッコジブラルタル海峡を挟んでヨーロッパのすぐ対岸。文化は海を越え容易に入り込んでくる。その列車に乗り込んで再び4時間の旅。そして漸く最初の目的地マラケシュに私は到着した。

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 既に日は暮れて、長い旅の疲れを癒したいところだが、もう一つ重要な仕事が残っている。そう、夕食を摂る事だ。折角マラケシュまで来たのだ。マラケシュならではの場所へ行こう。

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 イスラームの街なら夜道も安心だし、道筋が解らなくとも目指す先はマラケシュの人が知らぬ筈もない有名処。「ビッグ・スクエア」と尋ねれば皆指差して教えてくれる。

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 ビッグ・スクエア、正式名称ジャマエル・フナ・広場。昔は公開処刑の場とさえなった事もあると言うこの広場だが、今では日が暮れると観光客が大挙して集まる知る人ぞ知る屋台が結集する食い処だ。そしてエジプト、インドと並びバックパッカーを悩ませる御三家と呼ばれる押しの強く灰汁の強い連中が其処で旅人を待ち受けている事だろう。

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 早速ごった返す屋台街に突入すると一軒を選びモロッコだけでは無く北アフリカの名物料理クスクスを注文した。クスクスは世界最小のパスタと言われるが、本当に粉状に近い細かいパスタの上にシチュウの様なものをかけて食べる。パスタの粉状をご飯に例えるなら、ぶっかけご飯的な料理だった。丼もの大好きな私にとっては手頃に食べられてお腹いっぱいになれるのでありがたい。

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 さて、お腹もいっぱいになったし今夜はゆっくりしようとホテルに戻ろうとすると、再び別の屋台の客引きに捕まって離して貰えない。

「もうお腹イッパイだから!」

 と断れば、私が日本人だと察した客引きは

「でも、でも、でも、そんなの関係ねぇ!オッパッピィ!」

「はぁ…!?」

 相手は知っている日本のギャグを言ったに過ぎないのだろうが、何故か会話が成立してしまっている。これには一本取られた。もう一件梯子する事になった。

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 此処で出逢った料理、タジンはモロッコの家庭料理として有名で、数年前日本でもブームになったタジン鍋を利用して作られるスパイスタップリ(決して辛くは無い)の煮込み料理で日本人の口に非常に良く合う。

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 トロトロに柔らかく煮込まれた野菜や肉、それに香りと味わい深いスパイスが病み付きになる。その秘密は全てタジン鍋にある。三角錐の蓋が可愛らしいと言う事ばかりが話題になるが、その形には理由がある。

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 三角錐の上部は狭く空気の対流が起きにくいので鍋底で熱せられた蒸気やハーブ等の香り成分は上部で冷えて水滴になり再び食材へと戻る。また蓋を覆った水分はウォーターシールを形成し鍋を密封する。こうした水分を逃さず香りを飛ばさない蒸し料理に最適な圧力釜的役割をタジン鍋は持っている。

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 この様なタジン鍋の特性は水の少ない砂漠に暮らすモロッコの人々が、如何に水を節約して料理するかと言う知恵から生まれた。その水分を多用しない、即ち食材の元から持っている水分を極力利用する調理法は水溶性のミネラルやビタミンの損失を抑え、熱が通りやすい事から油分も控えられる。タジンはとてもヘルシーな料理でありタジン鍋は美容と健康に最適な鍋なのである。