2008メキシコ旅行記最終回

 私は最後にこの遺跡の水源となっていたと言う泉セノーテを訪れた。大地に大きな円形の穴があり、その奥に濁った水が満ちていた。そしてこの水場の仕組みを知った時、漸く川も湖も全く無いこの地に文明が興った秘密を知った。

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(千本柱の間 新チェチェンイツァ)
 この地が石灰岩で出来ている為、水は地下に染み込んでしまう為、川や湖がこの地に無い事は先に述べた。その水は地底の所々で地底湖を形成し、まるで自然の貯水槽となっていたのだ。それが所々で自然に出来た穴で地上と繋がっていた。

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(高僧の墓 旧チェチェンイツァ)
 その地上に出来た穴、即ちセノーテがある所だけに人々は暮らす事が出来た。まるで砂漠のオアシスだけに人々が暮らせた様に。そして其処に興った文明こそがマヤ文明だったのだ。しかし地下水脈なだけに、その水源確保には雨は不可欠。だからこそ彼等は神に祈り、天文学に磨きをかけてきたのだろう。

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(尼僧院 旧チェチェンイツァ)
 そして繁栄を築き、しかしそれ故の人工増加と共にセノーテの水源を守る為、時に奪う為、彼等は戦国時代に突入していったのかもしれない。

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(新チェチェンイツァの台座)
 チチェン・イツァにはメリダからカンクンまで移動しながら遺跡を見る、現地発のツアーを利用したが、そのツアーは遺跡見学終了後、別のセノーテにも訪れた。そのセノーテは水も澄み、泳ぐ事も可能なのである。

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(遺跡の其処ら中にいるイグアナ)
 なんて事だ。たった4日のピラミッド見学強行軍で泳げるとは思いもしなかった私は水着の用意が無かった。この暑さでこの幻想的なセノーテに飛び込みたい思いでいっぱいで、いっそパンツ一丁で泳いでやろうかと思ったが、パスポートも全財産も参しての独り身なので、それを濡らす訳にはいかない。

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 泳げない事は残念だったが、地底湖から見上げるセノーテはとても幻想的だった。それ以上にこのセノーテがマヤ文明発祥の原点だった、その場所に私がいる事に感動した。地上から植物の根っこがまるで蜘蛛の糸の様に垂れ下がっていた。

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 マヤ文明は、この水を求めて互いに戦い、やがて疲弊して文明を維持する事さえ出来なくなって、この密林の中に消えていったのだろうか? 嘗て幾つもの高度な文化を持った文明が互いに争い、そして消えていった。 我々の文化もまた争いの連鎖から抜け出すことが出来ずにいる。遺跡は声は出せないが、その姿を持って我々に警鐘を与えてくれる。

「君達が争いを止めない限り、きっと君達も我々と同じ運命を辿るよ!」

と。

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(民族舞踏)
 旅は終わり私はメキシコ出発の地カンクンに到着した。カンクンは日本の新婚旅行で有名な綺麗なビーチで有名な場所だ。しかしながら強行軍の私にとって滞在時間は眠るだけ。その綺麗なビーチさえ拝める事が無い。