2006エジプト旅行記13

 アスワンはリゾート色さえ感じる美しい街だ。あのアガサ・クリスティもこの街の名門ホテルでナイル殺人事件を執筆したと言う。ツアーでもそのホテルに宿泊を売りにしているコースもあるが、我々のツアーは廉価版。しかし私には今回も豪華過ぎる、川の中洲に建つホテルに宿泊となった。

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(アガサ・クリスティナイル殺人事件を執筆したオールド・カタラクト・ホテル)
 窓を開けて仰天!目の前にナイル川、川の畔には花が咲き、緑のすぐ背後には砂漠が迫る。そしてナイルにはファルーカと呼ばれる地元のヨットが浮かんでいる。そのコントラストの美しさに目を奪われた。

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 これまでカイロの街と言い、サハラ砂漠と言い砂色一色の世界を旅してきたから、鮮やかな色が眩しい位に迫ってくる。イスラームは庭園を水と緑を巧みに利用して楽園を表現するか、水や緑が何処にでもある日本と違い、砂色一色の砂漠に暮らす彼等のオアシスに対する想い入れは、我々のそれを超越するものがあるのだろう。

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 暫しベランダでこの光景を楽しんだ後、私はホテルを後にした。おば様達はアスワンの街に買い物に出ると言う。お嬢様なのか疑う事を知らない彼女達。ついつい言い値で買ってしまうから、レクチャーが大変だった。

「奴等は平気で十倍の値段で吹っ掛けるから、10分の1の値段を払いなさい!心配なら下見だけして、日が暮れたら私がお供しましょう。」

 私は添乗員さんに「面白い場所無い?」と聞いて、中洲のこの島内にヌビア人の集落がある事を教えて貰い、其処に潜入した。

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 時に出逢った人と語らい、時に素朴な民家まで上がらせて貰い、そうこうしているうちに私は廃墟っぽい遺跡に辿り着いた。

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 後から調べればクヌム神殿と呼ぶそうだ。各地の修復が完了した遺跡と違い、此処は崩壊したそのままの姿で残っていた。夕陽も近づき夕陽に照らされた廃墟寸前の遺跡は、それが故にやけに遺跡っぽくて、私の心に響くものがあった。

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 しかしそんな折り遺跡の番人ぽい人がやって来て

「もうオシマイだし、お前何処から入場した?入場料払っとらんだろ?」

 と水を指す。私も迷い込んだばっかりに、入場料を支払っていないから反論出来ない。しかしそんな時は冷静に!ボールペンでは無くボールベンを恭しく彼に差し出す。

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「オー!ベン!」とベンの書き味を確かめて、「あんまり長居はするなよ!」と言い残し、入場料を請求する事も無く彼は去っていった。なんでこんなにボールベンは効力があるのか?エジプトポンドよりずっと価値がある気がする。

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 日が暮れて、結局私は一同を引率して中洲のホテルからアスワン市街のスークヘ。お人好しのおば様方では、屈強なエジプト商人達には格好のカモになってしまう。

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 店主から5千円と吹っ掛けられても

「ちょっと高いわねぇ、どうしようかしら?」

 と悩んでいる。慌てて中に割って入って、彼女は5百円なら即決すると言っていると滅茶苦茶な翻訳を入れ舌戦が始まった。

「良いボディーガード連れてるな!」

 店主は苦い顔をして我等を見送ってくれた。

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