2006エジプト旅行記8

 地下鉄に乗りオールドカイロに向かった。歴史が長いカイロには新市街と旧市街と別にオールドカイロと呼ばれる地域がある。カイロが未だフスタートと呼ばれた時代に街の中心があった地域だ。いざ地下鉄に乗ろうと列車を待っていると悪戯小僧的数人が私を見て笑っている。列車が到着して車内に乗り込んでビックリ!其処は黒いベールで全身を覆った女性ばかり、つまり女性専用車両。慌ててホームに戻る私を悪戯小僧がこっちだ!っと呼び込み隣の車両に駆け込んだ。

 欧米のレディーファーストの風潮よりずっと以前からイスラームでは女性専用の車両がある。電車だけでは無くバスでも徹底している。運転手や出入り口に近い前方の席は女性専用席となっており空港の飛行機から搭乗口を往復するバスさえ例外では無い。黒いベール等の見た目から、イスラームは女性蔑視等と良く言われるが、それは欧米から見た歪んだ価値観であり、実際は異なる。ドバイではバスの待ち列さえ男女別で、人数の少ない女性の列はドンドン回転し、男は暑い直射日光の中、長い行列をひたすら待ち続けるしかなかった。これには男性蔑視じゃないか…とさえ思った程だ。

 地下鉄の駅を降りオールドカイロに向かう途中道に迷ってしまった。イスラーム帽に長い顎髭を蓄えた仙人風の老人に道を尋ね、彼の指差す方角を見れば警官の一団が。彼等に聞けと言う意味らしいが、この国では警官は当てになら無いどころかバクシーシ求められたり厄介な存在だ。

 結局警官の一団に囲まれながらオールドカイロ到着。周囲には警官に警護を受けながら歩むVIPに映ったか?はたまた警官に御用となったバックパッカーに映ったか?でもバクシーシをすんでのところで交わしつつ、緩い話で盛り上がって楽しいひとときだった。

 オールドカイロにはコプト教の教会である聖ギルギス教会がある。コプト教キリスト教の一派であり、かなり古い時期にヨーロッパ系のキリスト教と袂を分けており、原初のキリスト教の性質を多分に残していると言われる。

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 袂を分けて以来、カソリックからは異端扱いされ、周囲はイスラーム一色で少数派としての過酷な運命の下にあるのが現状だが、聖書ではイエスが一時この地に匿われていたと言う記述があり、それが彼等のアイデンティティーとなり、彼等を守ると共に多くのキリスト教の巡礼者がこの地を訪れる。

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 再び新市街へと戻りナイル川の中洲の島にあるカイロタワーから、カイロを一望した。眼下にはナイル川が流れる。エジプトの旅はナイル川を旅すると同じ。何故なら砂漠に覆われたこの国で、人の暮らせる場所はナイル川の畔のみ。それは太古から同じ事。これから遡る事になるナイル川を眺め、暫し物思いに耽る。西方にはスモッグに霞ながらも薄ぼんやりとピラミッドがその偉容を誇らしていた。

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 夜の帳が降りる頃、ツアーの面々と落ち合ってナイル川クルーズが始まった。船内ではベリーダンスのショーが催される。イスラームらしからぬ肌の露出の美女の躍りに、折角のカイロの夜景も目に入らない。

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 そして厄介な事に、この手のショーは、終わり間際は観客を巻き込んでのショーになる。高齢者主体の我がツアーで巻き込まれるのは当然私。知らぬ間に舞台に上げられベリーダンスならぬ盆踊り大会の様に、美女と共に躍りながら、カイロの最後の夜は暮れていった。