2006エジプト旅行記7

 さて幾つかのモスクを見学した。普通宗教施設は特定の歴史的物件を除いて入場料は無いのが一般的だが、エジプトは観光客が多い故か、バクシーシと言う形で請求される。チップに弱い日本人、なら入場料請求された方がよっぽど解り易いのだが…。しかしエジプトには取って置きの手段がある。

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(アズハル庭園からムハンマド・アリ・モスクを眺める)
 それは…なんと。ボールペンだ。何故かは知らぬが06年当時圧倒的な効果があった。第三ヵ国では日本の書き味の良いボールペンは有り難がられたり、子供のお土産には最適だったりするものだが、時に金以上の効果を示す国はエジプト以外知らない。

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(アズハル庭園)
 勿論モスクのバクシーシもボールペン1本で下手なバクシーシより有り難がられた。係員が上司に「へへへ、ボールペン頂きましたぜ!」なんて持っていくぐらいだ。ボールペンに幾度が窮地を救われた事か。勿論情報を事前入手していたから100円ショップで十本入りのを幾つも用意して行ったし、スペシャルには4色も用意したが、これほど効果があるとは夢にも思わなかった。

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ムハンマド・アリ・モスクからカイロ旧市街を眺める)
 これはツアーメンバーにも大評判になり、バスで会話が弾んだが、「エジプトの人はペンをベンと発音する。どうしてか?」との質問に、ちょっとプライドが高いエジプトのガイドが馬鹿にされたと思ったのか機嫌を損ねてしまった。

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(アズハル庭園からムハンマド・アリ・モスクを眺める)
 そんな時こそ私の出番だと蘊蓄を披露した。

「民族の言葉にはそれぞれ聞き取り難い発音があるものです。例えば韓国人はFの発音に弱いです。日本人と韓国人の見分けがつかなかったらパーフェクトと言わせて見てください。パーペクトとFとPがごっちゃになってしまいがちなのが韓国人。一方日本人はRとLの区別がつきません。日曜に礼拝(pray)に行くのも、遊び(play)に行くのも判別がつかないから厄介です。」

「欧米人にも弱い発音はあります。スペイン語でHは無声音ですが英語でもハッキリ発音しません。私の名前は”ひろし”ですが欧米では三音節の単語は大概真ん中にアクセントが入るので”色師”みたいに聞こえて格好悪いです。ですから私の海外でのニックネームは名字を呼び易い様に改造して”さっくん”です。”さ”では無く”く”にアクセントをつけると欧米風です!」

「おっと、脱線しました本題です。日本人だってペンをベンと読む可能性のあった言語なのです。何故なら日本語には本来ぱぴぷぺぽ、即ち半濁音は無かったのです!その証拠に人名や地名など固有名詞に半濁音を持つものが非常に少ないです。皆様は知っていますか?」

ツアーメンバーが手を挙げた。

「札幌!」

「非常に良い部分に気がつきました!そうです札幌の”ぽ”は半濁音ですね。他にも北海道には多くの半濁音の地名があります。でもそれは何故ならそれらの地名の語源がアイヌ語にあるからです。アイヌ語は濁音を持たず、半濁音のみの言語です。」

「つまり、日本語とはアイヌ文化との交流の結果、アイヌ語の半濁音を取り入れて今に至った。即ちアイヌとの出会いが無ければ、ペンをベンと発音していた筈ですし、ニッポンと言う呼称も無かった。だから私的には日本の呼称は”にほん”と呼ぶのが古来本道だと思っています。」

「おっと、また脱線しました纏めます。民族の言語にはそれぞれ生い立ちがあり、それぞれ違いがあるものです。その違いには様々な理由があり。それを学ぶのが旅の楽しさではないでしょうか。私も古来の日本の呼び方かもしれなかったペンをベンと呼ぶ様にしますよ。少なくとも此処エジプトでは!」