風に吹かれて~閑話休題

 前回イスラーム金融と言うキーワードが出てきた。イスラーム金融っていったい何?利息が取れないでどうやって成り立ててるの?なんて疑問も多く聞かれる。今日はザンジバルをちょっと離れてイスラームの銀行の謎に迫ってみよう。

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まず銀行の話をする前に大きく関わりのある喜捨について話をしたい。イスラーム喜捨の習慣がある事は前回述べた。喜捨は金に留まらず、精神的にモスリムの心に定着している。例えばバザールに行くと大きな商店の軒先に水瓶を見かける事が多くある。これは誰でも喉が乾いたのならどうぞ!と言う喜捨の精神のひとつだ。水は砂漠地方では命に関わる貴重なもの、貴重なものだからこそ儲けるのでは無く共有する。と言うイスラーム喜捨の精神に基づいている。

そして喜捨の精神は我々の募金のイメージより遥かに大きな規模であり、バザールは勿論、モスクやフンドック(宿)等地域全体が喜捨により成り立っている程だ。我々の概念に置き換えるとすれば喜捨=税金と捉えると理解しやすいかもしれない。

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さて此処で銀行に話を戻す。利子がつかないのなら、市民は誰も銀行に金を預けない。これは世界共通だと思う。そこでイスラーム銀行に貯金をすると喜捨にあたるとされるのだ。即ち我々の概念に置き換えれば、銀行に貯金をすれば納税したと同じ効力を発すると言う事。だからモスリム達は余った金は率先して銀行に貯金する。

これで資金が集まる事は解ったと思う。だけどそれだけでは銀行は利益をあげられない。ではどうやって利益をあげているのか?

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お金を貸しても、利息だけを取って利益を上げる事を禁じられているので、そこに実働を伴わせて、そこで発生する手数料を取って利益としているのだ。例えば工業施設が欲しい顧客の施設を銀行が買い取って、それを顧客に売り、差額を利益にしたり、起業したい人のコンサルティングをしてその手数料で利益をあげる。即ちイスラーム銀行は金融業に留まらず総合商社的役割も担っていると言える。

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この仕組みにどう言うメリットがあるのか?現代の資本主義社会の金融業は実体経済との解離が激しく、金融業が金を転がしに転がした挙げ句の果て、バブルが弾けたり、○○ショックで世界の経済が恐慌を起こしたり様々なデメリットが発生したのは記憶に新しいと思う。イスラーム金融は金融に留まらず総合商社的役割も果たし、実体経済にも大きく介入する事で実体を伴わないギャンブル的な投資を否定し、実体を伴った堅実な運営を行う事で経済全体の健全さをも保たせている。

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イスラームは欧米が世界の経済を牛耳る遥か以前に、商人が創設し、中東を拠点にアジア、アフリカを繋ぐ経済ネットワークを築き上げた文化である。その我々の先輩にあたる彼等の神が作り出した金融システムは、我々が自由経済と呼ぶそれが、いつの日か○○ショックやバブル崩壊を起こす事、所得格差が広がり、それが世界を脅かすまで膨れ上がる事を予知していたのかもしれない。

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またイスラーム金融は武器、ポルノ、賭博、酒等の業者とは一切取引が禁じられている健全で平和思考の金融でもある。現在イスラーム金融は宗教の壁を通り越して世界に広まりつつある。特にリーマンショック以降、欧米の金融家達が挙ってドバイのイスラーム金融に視察に押し寄せたと言う。