風に吹かれて~ザンジバル旅行記6

 私が泊まりたかったホテル、その名はパラダイスビーチバンガロー。日本人女性が切り盛りする小さなホテルだ。だが私は日本人が屯するだけの日本人宿なら寧ろ敬遠する。折角ザンジバルまでやって来て日本人とつるむなんて真っ平な事だからだ。

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 なら何故このホテルに泊まりたかったのかと言えば、オーナーのさおりさんの人柄に惚れたからだ。さおりさんはこのバンガローを建て、現地の人を雇い、貧しくて学校に通えなかった人を学校で学ばせ、卒業させて共に働いている。やっと一人前に育てたかと思いきや、備品を盗まれトンズラされたり、涙したこと、凹んだ事、苦労は絶えなかったそうだ。しかし現在、立派なバンガローに育て上げ、近年彼女の念願だった地元の人々への図書館も併設された。

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 従業員は高級リゾートの様にスマートとはとても言えないが、照れを含みながらもアットホームに接してくれる。そしてこの宿は絶景のビーチを目前として我々バックパッカーにも手が届く値段で提供されている。誰に対しても開かれている、さおりさんの宿こそパラダイスの名に相応しい。

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 また私がこの宿とさおりさんを気に入ったエピソードがある。海辺の共有スペースで寛いでいると、バンガローで飼われている犬が二匹遊びに来た。私がその1匹に触れようとしたら、慌ててさおりさんが触れないよう申し出た。その犬はもう老犬で目も耳もすっかり効かなくなってしまっているそうだ。なので無闇に触れるとおっかながって吠えてしまうとの事だった。

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 普通のホテルなら、そんな犬は客に触れない様に隔離されてしまう事だろう。だけどゲストに注意を喚起しつつも、仲間を最後まで平等に扱う。そのさおりさんの心意気に感動したのだ。

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 からゆきさん達の悲劇から1世紀、自らの意思と夢を抱いて、この島で頑張る日本人女性がいる。過去から未来へ、強い日本人女性達が日本とザンジバルを結んでいる。