風に吹かれて~ザンジバル旅行記1

 2012年9月棒日私は香港にいた。アフリカに向かう便の乗り継ぎは長いのが通常で、その乗り継ぎ時間を潰しに香港市街へと立ち寄ったのだ。茹だる様な湿度に包まれながらもビクトリアハーバーから眺める香港島の景色は美しいと思う。その時私の目の前をジャンク船が横切っていった。

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 ジャンク船とは昔中国が海のシルクロードを利用した海路貿易に大活躍をした帆船だ。勿論今では観光客を楽しませる観光用の船だろう。私が何故この帆船に敏感に反応したかと言えば、今回の旅のお目当ては帆船が重要なキーワードとなる旅だからだ。

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 昔、世界の中心はバグダッドにあった。そこから陸、海問わず交易のネットワークが世界中に広がっていた。前回紹介したサハラ砂漠の交易もその末端に位置するものである。海の交易のルートは中東から東南アジアを経て中国の広州に及ぶ。人はそれを海のシルクロードと呼んだ。陶器を中心に売買された事から陶器の道とも呼ばれている。その中国側で活躍したのが先に述べたジャンク船であり、中東側の帆船として活躍したのがダウ船となる。

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 一方もう一つの代表的なルートに中東とアフリカ東海岸を結ぶルートがある。そこには季節によって風向きが真逆になる季節風が吹く。アラブの商人はこの風を利用してアフリカ東海岸の人々と貿易を行った。この風を人は貿易風と呼び、アラブのダウ船が大活躍する事になる。

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 勿論交易は商品の行き来だけには留まらず、あらゆる文化がそこを行き来する。こうしてアフリカ土着の文化とアラブの文化が重なってスワヒリ文化と言う今ではアフリカでも代表的な文化が産まれる事となる。スワヒリ文化とは風が運んできた文化であると言える。

 そして今回の旅はそのスワヒリ文化の発祥地と知られるタンザニアの沖合いに浮かぶ島ザンジバルが目的地となる。そこには未だダウ船の文化が息づいていると言う。

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 アラブを中心として交易路の南端に当たるザンジバルへ帆船 が運んだ文化を訪れる為に立ち寄った香港、香港と言えば広州は目と鼻の先、広州と言えばアラブの交易路の東端に当たる。そんな香港でダウ船と共に活躍した帆船ジャンク船に偶然にも出逢ったものだから私は思わず感動してしまったのだ。出来る事ならこの帆船に乗り込み昔の交易路に沿ってザンジバルまで赴きたいものだ。

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 勿論そんな事は叶わないが...マリの旅ではキャンセルを連発して私を困らせたエチオピア航空。今回も値段が合うのが此処しか無かった為使わざる得なくとても心配していたのだが、今回はアッサリと言って良いほど順調に事は進み、気づけば窓の下にはエメラルドグリーンの美しい海に囲まれた小さな島ザンジバルを目指し、飛行機は高度を下げていった。