旧ユーゴスラビアを旅する完全版+サンマリノ編

 ようやく辿り着いたヴェネチア。早速歩き出したいのを必死に堪えて再びサンタルチア駅へ向かうと其処から列車に乗り込んだ。私が向かった先はリミニと言う駅。其処からバスに乗り継いでサンマリノ共和国へと向かった。

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 サンマリノ共和国は四方をイタリアに囲まれた世界で五番目に小さな国。どうして現在も国として成立しているのか不思議に思う国だ。しかし歴史的に見ると、イタリアは嘗ては統一されておらず、数々の都市国家が乱立していた時代が長い。ローマ法王庁は別格として、アマルフィ、ピサ、ジェノヴァヴェネチア等の海洋国家を始め、ミラノ、フィレンツェ等都市そのものが国として成り立っていた。

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 それもやがてひとつ、またひとつと巨大な勢力に飲み込まれていき、時代がやがて帝国が割拠する時代になると、最後まで生き残っていたヴェネチアもナポレオンの侵略により滅亡する事となる。

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 サンマリノはそんな中、余りにも小さかった事(単なる山ひとつ程しかない国土。)故、侵略者も敢えて攻め込もうとは思わなかったかもしれないし、またサンマリノの外交も上手く立ち回った事と思う。結果サンマリノは現在まで独立を保ったままとなった。故にサンマリノは現存する最古の共和国と呼ばれている。

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 サンマリノ行きのバスで山の上まで登った。山の頂上は都市を歩くと言うより山城を散策すると言った方が正しいと思う。城は三つの塔と城壁から成り、ひとつは修復中だったが、それぞれ見応えがあるもので、高い場所にあるから見張らしも素晴らしい。現在となっては山の頂上では生活が難しいのだろう、山の上は土産屋や政府機関が殆どで、住民はどうやら山の下のごく狭い国土に集中して暮らしている様だ。

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 国家の財政を支えている殆どは、存在の物珍しさと此処からの眺めを期待して訪れる観光収入が占めている。日本で言うなら高尾山を有する高尾市が国として独立している様なものかもしれない。

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 ローマのヴァチカン市国なら、宗教のその特異性から独立した存在であるのも頷けるが、此処サンマリノにそれほど強固な程の独立にこだわる理由が見つからない。しかしながらヨーロッパには似たように小さきながらも独立を守る国々が複数存在する。今回の旅、旧ユーゴスラビアの国々も、独立を巡って血みどろの近代史を通り抜けてきた。独立するとは何なのか?国とは何なのか?サンマリノの丘の塔から見渡す景色を眺めながら、ひとしきり物思いに耽った。

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 帰り道、列車を待っていると、想定外に定刻に列車が入線した。イタリアなのに珍しいと思いながら列車に乗り込み一息入れていると、ふと見たスマホのMaps.meがあらぬ方角を指している。あれ?
回りの乗客に行き先を尋ねてみた。やっぱり違う。どう言う事だ?

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 私が定刻にやって来たと思って乗り込んだ列車は、たまたま遅延してやって来た列車だったのだ。どうりで…。冷静になって地図と現在地を突き合わせて検討する。この列車がボローニャに停まるなら、そこで乗り換えればヴェネチアに行ける事が判明。早目に気づけて良かった。そして乗り換えた列車は私の切符よりランクが高い列車だったのだろう。当初の予定より早くヴェネチアに戻れてしまった。勿論ランクが高い部分の差額は車掌が来なかったので無視させて頂いた。遅延する方が悪い。ゴッツァンです!