旧ユーゴスラビアを旅する完全版+スロヴェニア・ブレッド湖編

 スロヴェニア滞在最終日、完璧とは言えないけれど滞在中一番の天気になった。待った甲斐あった。バスに乗りブレッド湖へ向かった。スロヴェニアの国土は狭い、リュブリャーナからどの方角に2~3時間走れば大抵の見所に到着する。

イメージ 1


 ブレッド湖はリュブリャーナの北方に位置しその北にはユリアン・アルプス。それを越えればもうオーストリア領だ。湖は周囲約6キロで半日あれば一周できる。湖の西寄りにスロヴェニアで唯一の島ブレッド島があり聖母被昇天教会が建つ。また湖畔の一際高い山にはブレッド城が聳えている。私は勿論湖を一周する事にした。

イメージ 2


 瑠璃色の湖面を眺めながら湖を約半周する頃に太陽がちょうど空の天辺に到達する。すると湖の鏡面現象が始まった。狙った様に湖からは島に建つ教会の向こうにブレッド城が遠くに聳える。

イメージ 3


 鏡面現象により映った雲が瑠璃色の湖面に浮かび、その上を鴨がスイスイと泳いでいく。

イメージ 9


 そんな風景を楽しみながら湖を一周しブレッド城を訪れた。高いところに建っているので壮麗に見えるが、城内に入ればそれほど広い訳では無く、豪華で大きな邸宅と言った風情だ。だが其処からの眺めは絶品で、昔の城主が羨ましくなった。

イメージ 4


 城を後にして手漕ぎボートに乗りブレッド島へ渡った。其処に建つ聖母被昇天教会の鐘を鳴らすと願いが叶うと言う。旅行中知った親友の愛犬が癌と闘っていると言う知らせ。私は順番を待つと

「神様、ワンちゃんの癌を治してください!」

 と思いきり綱を引いた。気合いを入れ過ぎたのか、綱の反動は想定外に強く、軽い私は綱を持ったまま引っ張られて宙に浮いてしまった。慌てる周囲の人々、笑いを漏らす人々…。でも事情を話すとみんなお祈りしてくれた。優しいな。ワンちゃん癌に負けるなよ!世界中の人々が味方になってくれている!

イメージ 5


 ブレッド湖を後にしてヴィントガル渓谷に足を運んだ。ブレッド湖から渓谷までは約5キロ、私の足なら徒歩圏内だ。長閑な田舎道を途中牛をからかいながらのんびり歩いた。

イメージ 6


 これまでオフリド湖を始めとしてプリトヴィツェとかアドリア海とか美しい水辺の風景を眺めてきたが、ヴィントガル渓谷も例に漏れず、痺れんばかりの透明度を誇る美しい渓谷だった。

イメージ 7


 暑さが厳しい季節にも関わらず渓谷は涼しげで散策も楽しい。またプリトヴィツェでも感じた事だが散策コースの木道の設計が渓流の美しさを如何に良く見せようかと言う工夫が感じられ、その点も感動する。日本だとたぶんこうはならないと言う設計だ。

イメージ 8


 スロヴェニアでは、ピランではアドリア海ポストイナとシュコツィアンで鍾乳洞、そしてブレッドで湖と渓谷と大自然を満喫出来た。小さな国土なので移動も楽。しかも立地的にイタリアのすぐ隣、シュゲン条約に加盟している事でパスポートチェックも不要、通過もユーロ。最早旧ユーゴスラビアと言うレッテルを脱し、西側諸国の一部として動き出したスロヴェニア。これから観光客も増えていく事と思う。