旧ユーゴスラビアを旅する完全版+クロアチア・ザグレブ編

 ベオグラードから夜行バスに乗りザグレブを目指した。クロアチアの歴史は語ったので重複は避けるが、ベオグラードからザグレブへ続くこの地域は両者の争いが一番激しかった地域だ。クロアチアセルビアは他の国々が単に独立を勝ち取る為セルビアと戦ったのとは違い、ユーゴスラビア王国時代から続く確執があった。だからユーゴ紛争終結後、国としての国交は回復したとは言え両国民の感情的なものは回復したとはとても言えない。

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 隣同士の国が仲悪い事は世界でも当たり前の様に多い。日本も例に漏れずお隣韓国や中国と問題を抱えているが、昨年訪れたアルメニアアゼルバイジャンアルメニアとトルコ、トルコとギリシャギリシャマケドニアコソボセルビア…と挙げ出したら切りが無い。その中でもクロアチアセルビアは最たるもののひとつだ。

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(ザグレブ中央駅とトミスラフ広場)
 近隣する国々を周遊する事は旅の醍醐味のひとつだが、そんな時訪れた国の国旗をあしらったTシャツやキーホルダー等お土産をつい購入する事も多いが、それらは帰国してから使用すべきだ。うっかり忘れてそれを着用してお隣の国を訪れようものなら、何処かから石が飛んできてもおかしくない。旭日旗のTシャツを着て韓国行く様なものだと書けばその方が解りやすいかもしれない。

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 さて、今回の旅程ではクロアチアには2日滞在しスロベニアに向かう日程を取っていた。1日は前回未訪問のプリトビツェ湖群国立公園を訪れる事は決めており、もう一日をザグレブ再訪に宛てていた。が、やっぱり再訪より未訪問の街を訪れたくなり、その様にしたので、首都ザグレブに関しては前回11年に旅した記憶から紹介しようと思う。

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 それまでの私のヨーロッパ訪問は、私とヨーロッパの相性が悪いのか、天気に恵まれない事が多かった。石造りの重厚な建築、そして石のダークなトーンは私に重々しい印象を与えた。

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 しかし此処ザグレブでは晴天に恵まれ、しかもオーストリア帝国に支配されていたこの街は、マリア・テレジアが愛した色、その名もマリア・テレジア・イエローと呼ばれるクリーム色がかった黄色で塗られた建築も多く、それまでの重々しいヨーロッパの街並みと言う私の印象を払拭してくれた。

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 更にこの街で特に印象的だったのが花の多さだった。ヨーロッパではどの街も綺麗に花が飾られているものだが、ザグレブは一際花の美しさに惹かれた街だった。と言う訳で私のザグレブの印象はとても華やかな街と言う事になる。

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 駅前からは官庁が多い整然と区画された新市街が拡がる。新市街と言っても歴史的建築は多く、公園も整備され非常に雰囲気が良い。街の中心イェラチッチ広場から先は小高い丘となっており、そこから先が旧市街となる。イェラチッチ広場から丘を上がったところには青果市場が広がり果物、土産物、そしては花が売られ多くの買い物客で賑わっている。

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 その先に見える二つの尖塔が聖母被昇天大聖堂、ザグレブのシンボルだが片側の尖塔が修復中だった。今回訪れた時も相変わらず修復中。いったい何年かけて修復するのだろう?

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 旧市街の家屋は淡いパステルカラーの色合いの家が多く、ヨーロッパらしいオープンカフェが所々にパラソルを拡げ、開放的な雰囲気を醸し出している。もし今の20代の若者、つまりユーゴ紛争の後に生まれてきた旅人が訪れたなら、此処が自分達が生まれた頃に紛争が起こった場所とはとても信じられないだろう。

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 旧市街を散策途中、ザグレブを代表するもうひとつの教会を発見した。聖マルコ教会だ。それにしてもこの屋根の柄。こんな教会初めて見た。左の紋章はクロアチアを構成するクロアチア王国、ダルマチア地方、スラヴォニア地方の三つの紋章を合わせたもの、右はザグレブ市の紋章だ。

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 こうして私は一通りザグレブを歩いた。これまで、イスラーム色濃厚なマケドニアボスニア・ヘルツェゴビナコソボ。正教のセルビアモンテネグロと旅を続けてくると、クロアチアカソリックの国なだけあって、漸く西側諸国に近づいた感があり、何処と無く洗練された感触がある。かと言って西側の大都市の様な巨大な首都では無くこじんまりした首都である。旅の始めに訪れるのにもちょうど良いサイズの街であった。

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 また、ベオグラードザグレブ、この歴史的に対立を深める宿敵同士の街を続けて訪れると、二つの街の雰囲気の違いに大いに驚いた。紛争の後のイメージもあろうが、何処と無く哀愁が漂い燻し銀的イメージが漂うベオグラードに比べ、色とりどりの花が咲き誇り、カラフルな屋根の教会が建つザグレブはとっても華やかに感じた街だった。
 

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 その印象は当時から7年経った今でも変わらない。今回はスルーを決めたがやはり目の前にすると歩きたくなるのは山々だ。だが、やっぱり私は未だ見ぬ場所を見たいと言う気持ちが勝る。次回はドブロブニクと並びクロアチア観光の横綱格のプリトビツェ湖群国立公園へと向かう事にする。